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2019年に見聞きしたもの

2019年が終わろうとしている。2年前の6月に会社を作ってから、節目としての大晦日/元日の役割が希薄になった。自分のなかで。12月は年の瀬ではなく、半期を過ぎた折り返し地点になった。

仕事の総括のようなことは今年で言えば6月ごろに済ませており、そのときに決めたことを大事にあと半年を過ごしていきたいと思っている。というわけでぼくは書かないのだけれど、年末、知ってる人たちの仕事まとめを読むのはおもしろい。心からの労いの気持ちをもってそれらの文章を読めるかどうかで、自分の心が健康であるか判断できる気がする。今年は、読めた。いい年末だ。

仕事のまとめは半年後に先送りにするとしてここには、自分のため7割、読んでくれる人のため3割の心持ちで、今年見聞きしたものの記録を残しておく。いいものをたくさん身体に入れられた一年だった。

映画

去年に続いてたくさん映画を観た1年だった。旧作をスクリーンでかける特別上映枠「午前10時の映画祭」で観た『スティング』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、『未知との遭遇』はすごくよかったし、この粋な取り組みが今年で終わってしまうのは悲しい。年明けに同枠で上映される『七人の侍』も、ぜひ観たいと思っている。

「スクリーンで」という意味では、Netflixの映画『ROMA』を劇場で観られて本当によかった。BGMのないモノクロ作品なので、映画館で真っ暗闇でなければ、ぼくは集中力が保てなかっただろう。

同様の経験がしたくてNetflix映画『アイリッシュマン』もアップリンク吉祥寺に行ったが、こっちは開始40分ほどで眠ってしまい、このまま3時間半観ても理解が追いつかないと判断して退出してしまった。静かな映画を観る前にビールを飲み、スパ吉を食べてはいけない。年末に自宅で観た『アイリッシュマン』はちゃんと名作だった。

ほか、今年公開された映画のなかでは『スパイダーマン:スパイダーバース』、『グリーンブック』、『ブラック・クランズマン』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『プロメア』、『シュガーラッシュ:オンライン』『パドルトン』といった作品が印象に残った。特に『ブラック・クランズマン』はハラハラして笑って最後はドスンと来た。

年末何人かの人に「今年のベスト映画は!?」と聴かれ、「いや、そういうことじゃなくて」とツッコまれてしまったけれど、今年観たなかで圧倒的に面白かったのは『恐怖の報酬 オリジナル完全版』だった。

40年前、全米で公開され賛否両論となってるうち、ほぼ同時公開の『スターウォーズ』にどんどんスクリーンを奪われてしまい大コケ。「興行的に失敗した映画」となってしまい、編集権をキープ出来ず。結果、勝手に30分カットされた「短縮版」が輸出され、日本では駄作扱い……という不遇すぎる映画の完全版が、40年の時を経て今年ついに公開されたのだ。詳しくは公式サイトINTRODUCTION([http://sorcerer2018.com/])に書いてあるのでそちらもぜひ。べらべら語ってるけど、ぼくも今年知りました。

ちなみにホラー映画みたいなタイトルになってるのは監督であるフリードキンの代表作が『エクソシスト』だからで、実際はアクションサスペンス。Blu-rayも買ったので、知り合いで観たい人はご連絡を。

映画は以上! 長い! ペース上げていきます。

演劇

演劇もいくつか観た。ヨーロッパ企画の『サマータイムマシン・ワンスモア』は落ち武者のくだりでお腹抱えて笑ったし、マームとジプシー『CITY』は柳楽優弥さんの演技に圧倒された。

ニューヨークで観た体験型の演劇『Sleep No More』は、照明に音楽に温度、湿度に匂いまで演出された空間を歩き回るのがやはりたのしく、2018年に上海で観たとき同様にドキドキした。

そして年の瀬、『ナウシカ歌舞伎』。漫画版を原作とし、映画で描かれた1巻の話からはじまって7巻の完結まで1日でやりきるまさに意欲作。11時にはじまって、終わりは20時40分。意欲ありすぎ。

歌舞伎を観るのは『ワンピース歌舞伎』以来で「ナウシカ」も映画を観ただけ。にわか中のにわかとしてもはや申し訳ない気持ち(しかも前から4列目)で行ったが、そんな人間にもナウシカ歌舞伎はやさしかった。はじめて借りたイヤホンガイドが「紫のはちまきをしている人は病気です」、「あの穴から出てくるのは人間ではなくあやかしの類いです」、「あれは中村七之助です」と歌舞伎の基礎や豆知識をじゃんじゃん教えてくれるし、常時あらすじのおさらいもしてくれるので展開に振り落とされる心配も無用。まったく飽きることなく10時間近い時間を過ごせた。来年はたくさん歌舞伎を観ようと思う。

お笑い

Twitter経由でチケットを譲ってもらって運良く参加できた『山里亮太の大140』がすさまじかった。「会場を一歩出たら、ここで聴いたこと見たものについての一切の記憶を消す」というライブなので何も覚えてないのだけれど、中野サンプラザの1F右手後方の席でひとり、猫背の身体をさらに曲げて笑いに笑った。あの巨大な笑い声の一翼を担えたことが誇らしい。

みなさん、来年もそこかしこで行われるであろう「山里亮太の140」に行ける機会があったら万難を排して行くことをおすすめします。めちゃくちゃ笑えます。何も覚えてないけど。

演芸

講談。毎週楽しみにしているラジオ『神田松之丞 問わず語りの松之丞』のスペシャルイベントである「まっちゃんまつり2019」に参加。もちろん、すごく面白かった。再三チャレンジしたけれど、今年取れた神田松之丞さんのチケットはこれだけ。真打ちになる来年は、もっと取りづらくなるのだろうか。松之丞さんのインタビューをまとめた文庫『絶滅危惧職、講談師を生きる』もめちゃくちゃ面白かったので興味ない人もぜひ。来年は他の人の講談も観てみようと思う。

落語。念願だった立川志の輔さんの落語を聞けた。『歓喜の歌』という、映画にもなった新作落語。余談だけど、出版業界の「新書」と演芸会の「新作」はどっちも同じ理由でややこしい名前だなと思う。『歓喜の歌』は大晦日に起きたダブルブッキングのドタバタ劇。年末恒例の演目で、来年もやると思う。最後の演出がすばらしいのですが、知らずにいった方が楽しいのでここには書きません。現場でぜひ。

あ、今年の「歓喜の歌」はとあるホールのこけら落とし公演だったのだけど、志の輔さんがついぞ「いい会場」と言わなかったのが印象的だった。ウソのつけないというか、ウソをつかないように生きている人なのかもしれない。

展示

展示もたくさん観た。

ビルバオのグッゲンハイム美術館とニューヨークのMOMAは美術オンチのぼくでもめちゃくちゃ面白かったので、美術にそこまで興味のない人も、近くに行くことがあったらおすすめです。MOMAにあったマグリット『脅迫された暗殺者』なんか、なんでかわからないけどずーっと観てられた。情報量なんだろうか。

『[世界を変えた書物]展』もすごくよかった。このためだけに無理して福岡に行ってよかった。人類の「知」の歴史を立体化した「科学史の連鎖の塔」に感動し、立ち尽くした。組み体操でいうなら、アリストテレスやアルキメデスが一段目で、その上にニュートンが乗って、いちばん上でアインシュタインが立つ。そんな模型。

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『これはゲームなのか?展 #2』も面白かったし、『小松左京展「D計画」』もよかった。京都の三重野龍展『屁理屈』の物量とセンスに圧倒された。協力した銀座ソニーパーク『My Story, My Walkman』も、一参加者としてたのしい展示だった。

なお、観られなくて後悔している展示は「バスキア展」、「藤子不二雄A展」、「ムンク展」です。来年はゼロにしなきゃ。

まんが

「ジャンプ」が面白い一年だった! 『ワンピース』は5年後の完結が宣言されて物語の密度が上がっているし、『鬼滅の刃』、『約束のネバーランド』、『Dr.STONE』、『チェンソーマン』、『僕のヒーローアカデミア』。どれもほんとおもしろい。

『ファブル』、『アオアシ』、『娘の友だち』、『空腹なぼくら』、『サターンリターン』も夢中で読んだ。『ヴィンランド・サガ』は相変わらず大好き。今年特にびっくりしたのは1巻読んだっきりで放置していた『不滅のあなたへ』。人にすすめられて14巻まで一気読みしたらすごい話だった。いま、新刊をたのしみにしている漫画のひとつ。

何も考えたくないときはKindleに入れた『1日外出録ハンチョウ』と『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を交互に読むようにしている。今年いちばん読んだ漫画はたぶん「ハンチョウ」。頭のメモリを一切使わず読める情報とギャグのバランスが絶妙。

ライブ

まず、Zeppで観たくるりのワンマンがすごかった。15年観てきたなかでいちばんよかったかもしれない。まだまだ変わると思うと、これからがより一層たのしみ。

サザンオールスターズをはじめて観た。家族連れが多く多幸感があって、ディズニーランドのようだった。矢沢永吉も観た。50代以上の男性ばかりで開演30分前から延々続く永ちゃんコールは神輿のかけ声のようだった。どっちも観たことのないもので、めちゃくちゃおもしろかった。

Perfumeの、1時間きっかりのライゾマ演出バキバキ公演『Reframe 2019』にはびっくりした。オリンピックの開会式、椎名林檎作曲、編曲中田ヤスタカ、歌唱とダンスPerfume、演出ライゾマティクスでやるんじゃないかと予想してる。

そしてそして、NUMBER GIRLの豊洲PiTワンマン。MCのたび震えたけど、自分以上に興奮している人がモッシュピットにはたくさんいて、「みんなほんとによかったね!」という気持ちで観た。

その他、印象に残ったもの

Amazonプライムの『ザ・ボーイズ』は久々に夢中になって観たドラマだった。『オザークへようこそ』もおもしろかった。

ゲームはほとんど出来なかったけれど、『テトリス99』や『リングフィットアドベンチャー』のようなゲームがばんばん出てくる任天堂はとんでもない。『ファイアーエムブレム風花雪月』は期待通りのおもしろさで安心した。

すすめられていったマーダーミステリーもめちゃくちゃおもしろかった! また行く。

最後に、イチローの引退試合を観られたのはほんとうにほんとうに幸甚だった。会見もたのしかったなあ。

以上です。いいもんいっぱい観られた1年だった。

来年もいろいろ見聞きします。

良いお年を。