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テオドールの日記

4月1日 晴天

6:00
起床。

6:30
各所清掃。教会はいつもよりひんやりとしていたように感じた。
リアが手入れをしている花畑に水をまいた。相変わらず綺麗なものだなと感心した。

6:45
相談所に戻るとポストに手紙が入っていた。子供の字。あとでリアに渡しておこう。

7:00
リアは今日依頼で出かけることになるので、パンケーキを作る。あと昨日サーシェルから茶葉をもらっていたので、食後はそれで紅茶をでも淹れよう。

7:25
朝食はできたが、リアが起きてこない。どうせ小鳥の鳴き声がとかなんとか言って二度寝をしているのだろう。
部屋に行ったら案の定気持ちよさそうに眠っていた。

愛らしいので少し眺めていたが、ミサもあるので起こさねば。小さな氷を創り出しそっと額に乗せた。間抜けな声をあげながら目を覚ましたので、朝食の仕上げにいく。

7:45
朝食。リアは美味しそうに食べている。どうしたのと聞かれたので、朝届いていた依頼の手紙を渡し、頭を撫でる。ふにゃっとした顔で笑っていた。

8:30
ミサ。いつもより30分遅れた。
ミサといってもかなり簡易的なものでほぼ真似事のような感じだ。でもリアが心から祈りを捧げているようなので、これはもはや形の問題ではない。

9:00
リアは依頼主の子供のところへ向かった。朝食を片付けてわたしも一休みしよう。

10:00
片付けが終わった後ソファでうたた寝をしてしまったらしい。午後からサーシェルの店を手伝うよう頼まれているので、とりあえず準備だけしておくか。

11:00
相談所宛の手紙が届いた。確認したところ、リアとデートがしたいとかなんとか書いてあったので粉々にしておいた。

11:20
癖で浮遊してしまっていた。出かける前に気がついてよかった…

11:25
サーシェルのカフェに到着。午後は客が多いためよくこうして手伝っている。いわゆるバイトというものだ。サーシェルは何を考えてるのかわからないのであまり得意ではないが、これもリアとの生活のためなので気にしないようにしている。
制服に着替えたので仕事を始める。

12:30
客が増えてきている。忙しいが、こうして黙々と働ける時間は嫌いではない。
リアはちゃんと依頼をこなせているだろうか…慣れた生活ではあるが、どうしても頭の片隅で心配してしまう。

カフェの客で、フルールを慕う女性たちがいた。あの若さで騎士になれたのは確かに並大抵のことではないが、わたしからしたらギャーギャーとうるさい女に過ぎない。

にしてもまだ忙しさは続きそうだ。15時までの業務なので、終わったらリアの様子を見にいくか。

15:00
業務終了。サーシェルがお茶でもして行きなよと言ってきたが、そんなことよりもリアの様子を見に行く。さっさと着替えて店を後にした。

15:10
店の近くでリアが知らない男性と話をしていた。リアと同じか少し上くらいの歳。物陰から様子を見ていたが、どうやら例の粉々にした手紙の差出人らしい。そういえば手紙に15時に相談所前でとかなんとか書いてあったな…。少し様子を見る。

15:30
リア、誘いにのる。どうやらご飯を奢ってくれるとかなんとかで乗り気になったらしい。そんなことでついていくなって…

そのままサーシェルの店に入っていった。どうしたものかと思っていた矢先、フルールと鉢合わせ。事情を話したところ店の外から様子を見ると言い出した。やれやれ…

16:00
何があったのかは知らないが、男が1人でトボトボとでてきた。普通に話しているだけに見えたが、何があったんだ…

16:10
カフェに入りリアと合流。
バーの準備を手伝い、4人で休息。リアに変わった様子はなかったので一安心。

17:00
相談所に戻る。夕飯の支度をしようとしていたらリアが眠そうにしていた。このあとソファで横になるだろうから、先にブランケットを取ってくるか

案の定ソファで寝ていた。窓から心地の良い風が入ってきていたので、ブランケットをかけた。寝顔も可愛いなこいつは…

19:00
夕飯の支度完了。リアもちょうど起きてきたので、食事にする。リアは美味しそうに食べるので見ていて嬉しくなる。

人間になる前は料理を必要としなかったので料理も作れなかったが、見様見真似でもできてしまうものだな。

20:30
夕食の片付け完了。流石に人間の体だとあれこれやると疲労がでてくる。別に疲れて休みたいというわけではないが、以前なら疲労というものがなかった分、こういうことには敏感になる。

21:00
リアがシャワーを浴びている間、相談所の近くにある木に登り夜風を浴びている。自室の窓から飛んで登ってはいるが、やはり以前よりも浮遊能力は格段に落ちたと感じる。
正直足を使って歩くよりも浮遊してしまった方が楽ではあるのだが、人間に見られて驚愕されても困るので、普段は歩くようにしている。

それにしても、今日は風が心地良い。寝る前にも自室の窓から風を通しておくか。

22:00
シャワーを浴びて寝る支度完了。
リアもそろそろ寝る時間なので一度様子を見に行く。

部屋をノックしたが返事がない。ドアを少し開けて様子を見ると、すでに眠っていた。本を読んでいるうちに寝落ちてしまったようなので、少し寝顔を眺めた後、片付けておく。

22:10
そっと本を回収し、机に置く。この本には見覚えがある。
相談所ができる前、ここはリアの両親が住む教会で、幼かったリアが寝る前によく父親に読み聞かせてもらっていた本だった。たしか天使が出てくる本。
リアは天使みたいに優しい人になるんだよとよく言われていたのを今でも思い出す。

無くした幼い頃の記憶を戻そうとしているのだろう。普段へらへらとしているのであまりわからないが、本人としてはやはり辛いものなのだろう。

布団をかけ直しそっと頭を撫でてから部屋を後にした。

22:30
相談所の見回りと戸締りを確認し、自室に行く。もう寝ることにはするが、最後に天に祈りを捧げた。
明日もリアが健やかに笑顔でいられるように。そして、どうかリアの記憶が戻らないように、辛い思いをしないようにと。

正直今の自分には大した力はない。せいぜい氷魔法が使えて多少の浮遊ができる程度だ。傷を癒すことも願いを叶えることもできない。だからせめて人間としてリアを守り抜けるようにしよう。

4月1日 晴天
今日も何事もなく平和。この日が長く続きます様に。

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