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空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか 後編(1) テキスト版

はじめに

こちらは、創作漫画『空の青さを知っているか、波の音は聞こえるか』の場面解説を交えたテキスト版です。

ツイッターでも同様の内容のもの(画像解説付き)をあげていますが、note版ではテキストも一緒に掲載しています。

また、前編までの空波はこちらのマガジンから読むことができます。
前回のお話を見直す際にぜひご活用ください。

後編(1)

1ページ目

空波後編(1) 1ページ目

【場面: 朝、1年4組(過去)】
窓から春の陽光が差し込む教室の中、ただ一人自分の机の前に座っているひなた。
一校時目の開始を告げるベルだけが響く。
教室にひなた以外は誰もおらず、黒板には「4月12日 佐々木 佐藤」の文字と、真ん中に大きく「化学 移動教室に変更 実験室」という白い文字が書かれている。

机の上に化学のノートと教科書を広げ、俯くひなた。
その後ろから渚が現れる

渚「おーい。おーいってばあ」

しかし、ひなたには声が届いていない。
少し考えてひなたの顔の前で手を振る渚。

渚「もしもーし」

ようやく渚に気がつきはっと顔をあげるひなた。

2ページ目

空波後編(1) 2ページ目

ひなた「!?」

ようやく渚の存在に気が付いて慌てふためくひなた。
渚「いやー、遅刻しちゃってさー。まじあせっ……」
ひなたの前の席に座りながら話しかけてくる渚に、ひなたが慌てて化学のノートに文字を書き、緊張した面持ちで渚の前に見せる。

ひなた『私 耳がきこえないんです』

目を見張って驚く渚に、再び顔を俯けるひなた。
ノートを下ろそうとしたその時、渚がノートを指差す。

渚「それ、かして!」

笑顔で言う渚に、今度はひなたが驚いた表情になる。

3ページ目

空波後編(1) 3ページ目

ひなたのノートとシャーペンで筆談をする二人。

【筆談の内容】
渚「なんで一人? みんなは?」
ひなた「移動教室に変更だってこと気付かなくて
誰かが言ってたのきこえなかったみたい」
渚「そっかー
あたしはねちこく笑」
ひなた「そうなの?」
渚「きのう夜更かししててさー
ドラマ見てゲームしてたら12時」
ひなた「ゲームするんですね
ちょっといがいです」
渚「やるよー
受験でガマンしてて……」

作中のひなたのノートより

筆談で話をしているとあっという間に時間が過ぎ、早くも授業終了のベルが鳴った。

渚「あっ、授業もうおわりか」
唐突なベルに後ろの時計を見る渚とひなた。
渚「あ、そーだ……んーっと」
椅子から立ち上がる前にノートに何かを書く渚。
書き終わった後、ノートをひなたの前にかかげて書いた文字を指で指す。

渚「あたし、青葉 渚。よろしく!」

差し込む陽光に照らされ、そう言う渚の笑顔がひなたの目に眩しく映っていた(ノートにもほぼ同様の内容)。

4ページ目

空波後編(1) 4ページ目

【場面: 朝、1年4組(現在)】
(前編(4)の時間軸へと戻る)

頭に包帯を巻き、白杖を持って現れた渚に呆然となるひなた。

ひなた「(ケガ……白い、杖……)」

葵と美桜が渚に駆け寄り、何かを話している様子をただ唖然と眺めていたが、そのうち居ても立っても居られなくなり渚のもとへと駆け寄る。

そのまま、葵と美桜を押しのけるようにして渚の手首を掴む。

渚「えっ!? ちょっ……なっ……!?」

戸惑う渚たちなどお構いなしに、ひなたが渚の手を引いて教室を飛び出す。

【後編(1)終わり】

つづきはこちら

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