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フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ / ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

ブリュッヘンと18世紀Oが目標としたベートーヴェンの「英雄」の演奏と録音がついに実現。

ブリュッヘン&18世紀O / ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

ブリュッヘン&18世紀Oは結成当初から「ベートーヴェンの交響曲第3番『英雄』を演奏する」ことを目標にしていました。その目標が実現したのは1987年11月。
このCDはその時の世界ツアー凱旋公演のライヴ収録です。

フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
初出CDジャケット表

参考までに、これまでのブリュッヘン&18世紀Oの交響曲の録音年を振り返っておきます。

・モーツァルト:交響曲第40番 1985年5月
・ベートーヴェン:交響曲第1番 1985年5月
・モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」 1986年5月
・ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 1987年11月

モーツァルトの交響曲第39番とベートーヴェンの交響曲第2番が残っていますが、こちらの2曲は翌1988年6月に演奏・録音されます。

現代オケによる「英雄」を聴き慣れた耳でこの演奏を聴くと、ずいぶんと素朴でゴツゴツとした印象を受けます。
「英雄」は古典派音楽で通常用いられる2管編成(木管楽器、金管楽器が2本ずつ)と異なり、ホルンが3本に増強されています。そのため、全曲通して聴くと、ホルンの音色が雄弁なことが分かります。
第3楽章のトリオ(中間部)では3本のホルンが活躍しますが、現代オケの洗練された音色によるスマートな演奏と違い、音程を決めるのが難しいとされる古楽器のホルンなので、よい意味でどっしりとして威厳のあるホルン三重奏です。ホルンの原型とされる角笛の音色も思わせます。ヨーロッパの山野に響く封建領主たちの狩の角笛のようにも聴こえます。
第4楽章のコーダ(終結部)は、ベートーヴェンの速度指定はPresto(急速に)なのに、現代オケでは流麗なゆったりしたテンポで演奏されることが多く少し不満がありましたが、ブリュッヘン&18世紀Oではベートーヴェンの指定通りのPrestoで締めくくられます。やっぱり、こうでなくっちゃ!
☆古楽器奏法では弦楽器にヴィヴラートをかけないため、現代楽器に比べて響きは細くなりますが、速いパッセージは弾きやすくなるそうです。

この演奏は同時に収録したと思われるDVDも発売されていましたが、現在は入手困難です。

ブリュッヘン&18世紀Oは「英雄」を名刺代わりに演奏していたようで、来日公演でもよく取りあげていました。

「ベートーヴェンの『英雄』を演奏するという目標を達成したブリュッヘン&18世紀Oは、これ以後はベートーヴェンの第4番以降の交響曲も演奏するようになっていき、1993年にベートーヴェン交響曲全集を完成させます。さらに、シューベルトの交響曲やメンデルスゾーンの交響曲も演奏するようになっていきます。

次回予告 フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ / モーツァルト:交響曲第39番&ベートーヴェン:交響曲第2番

目標としたベートーヴェンの「英雄」の演奏するという目標を達成したブリュッヘンと18世紀Oが次に挑んだのは、モーツァルトの交響曲第39番とベートーヴェンの交響曲第2番。これで、モーツァルトの後期3大交響曲とベートーヴェンの初期の3つの交響曲集が完成。

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