漫画喫茶を待つ男

 深夜の池袋西口。一人の男が宿を探し歩き回っている。 
 男は終電を逃したらしい。着古したワイシャツに黒の上着を着て辺りをうろついていた。
 「いらっしゃいいい娘いますよー!」というガールズバーのキャッチを「教えてくれてありがとうございまーす!じゃ吉野家行きまーす!」と笑って受け流しそのままの流れで牛丼の特盛に半熟卵を付けてかき込む。丼を持ち上げてはその重みに感嘆しバラ肉を噛み締める間もなく口内へ押し込み圧し合い挙句ご飯をおかわりしていた。
 腹を満たしてまた歩き回る。「まんが喫茶 満坊」という看板を見つけ受付へ移る。曰く2人分のキャンセル待ちだという。いつ部屋が空くかも分からない状況らしい。
 仕方がないので待ち席のソファーに腰掛けてじっと待つ。 
頭を掻く。
フケが散る。
頭を掻く。
フケが溢れる。
頭を掻く。
フケが舞う。
頭を掻く。
フケが降り積もる。

 ともう少しで自分のフケで身体が埋もれそうになるところで店内から客と思しき人間が受付に来た。すわ遂に空いたかと身体を揺り起こして見ると外出の手続きをしているだけだった。
 部屋が空かない限りこの作品は完結できない。何しろあくまでも空くまでの暇つぶしに書いているだけである。しかし空かない。ずっと終われない。

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