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出産日記day5(帝王切開)

ついにこの日が来た。
昨日の診断で決定した帝王切開。
リスクを並べたらキリがないが、
優秀な先生たちを信じて平常心で臨むと決めている。

23:00ごろ眠りにつき、
1:00ごろ、3:00ごろ、5:00ごろに目が覚めトイレへ。
昨日の晩21:00以降は飲食禁止でOS1のみなので、
お小水の出がいつも以上に悪いが、
尿意があるからには排出はしておいたほうがいいな、
と思った。

今日は午前中、警報級の風雨らしく、
夜中〜朝方も雨の音で何度か目は覚めたが、
朝はスッキリ目覚めたので割と寝れたと思う。

6:00に昨日通したルートから点滴開始。
気にしていた朝一番の尿検査尿糖はマイナス。

朝食後は母子手帳と週数日記を急いで仕上げた。
改めて、32週以降が怒涛の速さで過ぎていったし、
まさか37週で産むことになるとは…
でもそれが最善の選択だ。
乗り越えた先に、喜びがあると信じてその時を待つしかないなと考えた。

10:30ごろ夫が病院に到着。
10:45を過ぎた頃、いよいよ車椅子で移動。

分娩室エリアへ向かう途中、エレベーターホールで夫と合流。
いよいよだね、と話しながら進み、
分娩室の入口で助産師さんが医療用キャップを渡し、

「奥のソファーでつけてお待ちください」といったのに夫がその場でかぶりはじめ、しかもそのかぶり方が中途半端で吹き出してしまった。少し緊張がほぐれたが、そのせいで手術室で写真と動画撮ってねと伝えそびれた。

分娩室エリアへは先に助産師さんと2人で入室した。
その間、「ご主人、お茶目ですね」と言われ、
2人でくすくすと笑いながら、
車椅子を押され、廊下を進んだ。

ナースステーションの皆さまに会釈をしながら進む。
コウノドリでみたような景色が目の前に広がる。

手術室の前につくと、ドクター2名、助産師4、5名がエプロンをしてすでにスタンバイ、
皆口々によろしくお願いしますと私に声をかけてくる。
✩この時は気づかなかったが、このあとリーダーのドクターが左横に、責任者のドクターが壁横についていた様子。

ああ、始まるんだな。とここで強く実感。
手術台には昨年夏の頸管妊娠の際お世話になって以来なので、あの時看護師さんが声をかけてくれた通り、産科に帰ってくることができたな、やっとポジティブな展開でこの台にお世話になる日が来たなと感じた。

キャップ、血圧計、パルスオキシメーター、酸素マスクなどが次々と取り付けられていき、
硬膜外の下半身麻酔を背中から注入するため、エビのように背中を丸めるよう指示されてうまくできず。
できた!と思った途端針を刺され激痛にて悶絶。

だんだんと足の感覚が消えていく。
足を動かしたくても動かせない、むずむずする感じ。
そしてお腹と胸とに冷たい水を含んだアルコールタオルを交互に当てられ、感じ方に差があるかを聞かれる。
お腹に当てられたほうは温度は感じず、何かあたっている程度の感覚。
そのうち内診が始まったが、感覚はほぼなく、触られているな〜という少しの違和感のみ。何かの器具がチョロチョロと動き私のお腹の内側にあたる。

執刀します、と声がかかり、
その直後、ご主人さん呼んで、と主治医が助産師に指示。まもなくして今度はしっかりと医療用キャップをかぶった夫登場。

怖さと嬉しさが混ざって、仰向けのまま視線で夫を追う。「もう一回手術室入る前に会えると思ってた。気分はどう?大丈夫?」
と微笑みかけてくる夫。
お腹には緑色のシートがかけられているので、どの状態かは不明だが、お腹をかき回されている感覚を感じながら、自分の心拍や血圧が表示されたモニターと夫と天井を交互に見つめた。
心拍が通常70ほどのところ、開腹してからは50を切ることもあったし、血圧はいつも上は100を超えるが一時的に70を下回り、機器から変なアラーム音がなった。
血圧が下がったことを確認して、点滴で何かの薬剤が投与されたらしい。その後血圧の値は回復。
「お腹どんな感じ?割とすぐ赤ちゃん出てくるみたいだよね」と語りかけてくる夫。
酸素マスクをしている割には息苦しく、リップクリームもたくさん塗ったのに唇は乾き始め、喉がかれてくる。
左目からなぜか涙が流れ、夫が優しく拭ってくれた。

3人くらいの医師が会話をしながら、
私のお腹を切り開き、お腹の中のベビーを取り出そうとしている。強く引っ張られ、重いものがお腹の中から引き出される感覚。
ぐーっと引っ張られている他は何をされているのか、
麻酔のせいでよくわからない。
ただ、もうお腹は横に切られ、赤ちゃんの姿が見えていて、取り出す段階にある状態だ。
夫が、緑色のシートから少し身を乗り出し、
「すごい、、なんか全部見えそう。あ、赤ちゃんの足や胴体が見える!」と実況中継してくれた。
助産師さんから、あまり身を乗り出さないでください、と注意されながらも手術台に視線を向けて実況中継してくれた。

まもなく、ぐーっと引っ張られる感覚が何度も続き、
赤ちゃんがでてきた。
生まれたとき、私の身体におしっこを2回かけていたらしく、ドクターや助産師さんが大笑い。
ちょっと体重が減っちゃったかもしれませんね、
と助産師さん。

赤ちゃんが間も無くオギャーと泣いて、
その元気な鳴き声に、
全てが報われたような気持ちになった。

すぐに新生児科の先生たちによってチェックを受けて、
しっかり呼吸や心拍も問題がないことの確認がなされたあと、私たち両親のところに優しく助産師さんが連れてきてくれた。
お母さんのお胸に乗せましょうね。と言ってくださり、
小さな身体とご対面。すごく元気に泣いていたけれど、身体の小ささにはびっくり。ぎりぎり2,000gを超えていたが、手足も細く、本当に両手に収まるくらいの大きさ。
温かくて、手足をちゃんとばたつかせている小さな命に感動し、小さいねぇ、元気だねぇといいながら、
夫と2人で喜び、写真や動画をたくさん撮った。

後で知ったが、帝王切開で夫の立ち会いができる病院は数少ないらしく、都内でも数えるほどしかなく、
同じ日赤でも福岡では立ち会いできないようだ。
分娩室の中に手術室がある、という仕立てになっていない病院では物理的に立ち会いがNGとなるらしい。

30分ほどだろうか、写真撮影や抱っこといった幸せな時間を過ごした。その間、縫合などの処置がされていった(麻酔でほとんど感覚なし)。
母子手帳によると、産まれてくるまでの時間は12分となっているが、その後の縫合等々の時間はかなり長く感じられた。
オペが終わったのは12:30近くで、実質90分くらいはあの台にいたことになる。
下半身が全く動かせない状態なので文字通り寝たきり。話しかけられても、顔を向けて目で追い返答するくらいしかできないのでとても不思議な感じ。

出生届の書類の読み合わせ時に誤字を指摘し、
やり直したりということもあったが、
個室の産後部屋に案内されるまでなんだかんだで30分近くかかった。

その間、11:00ごろにオペだよと知らせていた家族が心配するだろうと思い、無事に出産できたことをLINEで報告(それでも13:00数分前。妹もお昼休憩だったようで両親も含め3人すぐ気づいてくれた)

13:10、個室に通される。晴れている日は富士山が見える側の部屋で、広くとても綺麗な印象。
14:00の面会時間はすぐやってきた。夫と両親が入室。
無事に産まれて本当によかった!!と2人ともとても嬉しそうだった。興奮冷めあらぬ帝王切開の一部始終について話した。
そして、母親に「無事に出産することができて元気な子を産むことができたのは、ママが私を丈夫に産んでくれたからだよ。ありがとう」と伝えた。この日に伝えるのがいちばんである言葉を、事前に考えた結果この言葉が浮かんだので伝えた。

産まれたての娘は低体重のためGCUに入っていること、大部屋を個室にする隣の部屋の工事がバッティングしてしまっている関係でこの部屋には来られず、もしGCUに面会に行くなら2人ずつ5時半以降可能になることを聞かされた。両親はまた日曜日にでもくるよ、といい娘との面会は次回におあずけとなった。
それぞれ、新生児科と産科の医師から以下のような説明があった(新生児科の時はたまたまだが両親同席)。

新生児科の先生からの説明
・呼吸器や臓器はしっかりとしていて働きも良好
・2,500gに満たないため低体重児のくくりとなり、GCUで輸液(点滴)と母乳をあげて様子をみる
・胎盤と臍の緒の病理検査を行なって、低体重児となった理由を確認している(結果は1ヶ月検診のとき)
・母子同室は早ければ土曜か日曜の日中から
・37週1日での体重分布でいくと2,000g前後は5%の位置だが、小さいというだけで発育はしっかりとしているのでミルクをどれくらい飲めるか次第
・今後3日は体重が落ちる期間にはなるので、その後の体重推移次第で母子一緒に退院できるか、産科医師とともに判断することになる

産科医師からの説明
・手術自体は問題なく終えた
・出血量も多くはなく、術後の経過も良い
・赤ちゃんが小粒な理由は、胎盤の病理検査にて確認中だが、原因特定できるかは不明。臍の緒の血流が少ないなどの理由もあり得るし、体質的な可能性もある
・子宮筋腫(大きさはMAXで3cm)が2つ、子宮の前側と後ろ側にある。筋肉に埋もれているため切ることはできず(通常このサイズであれば切らないし、帝王切開手術の場合は出血量も増えるので処置しない)
・出産後は子宮が小さくなることから子宮筋腫も小さくなる傾向がある。母乳をがんばってあげていれば生理が来ないので、子宮筋腫が大きくなることを防ぐことができる。その後経過観察となる。

麻酔が絶好調で全く痛みなし。
起き上がることはできない。数時間ごとに助産師さんが部屋にきてラクテックと収縮剤、痛み止めの点滴剤がちゃんと私の腕に落ちているか確認してくる。
初日の点滴も左腕で、とにかく腕がボコボコ。
薬がスムーズに腕に入っていかない角度もあるのか、
腕はまっすぐにしてくださいねと言われているのに無意識に曲げてしまうこともあり、度々反省した。

夫はGCUで17:30から娘に面会。
その様子を動画に撮って送ってくれた。
とても小さい体で哺乳瓶の先をちゅっちゅしていたり、点眼薬を落とされ泣いている動画だった。保育器の中に入っていてとても安心だ。
夫がとても嬉しそうにおーいおーいと声をかけている。
何度も何度もその様子を動画で見ては、
出産の瞬間を、妊婦生活を思い出し無事に産まれた喜びを噛み締めた。嬉しかった。

夫が部屋に帰ってきて、
お願いした冷たい飲み物(水2本、麦茶2本)を自販機で買ってきてくれた。少し日中よりも傷口が痛く感じ、動こうとしても痛みでほとんど動けない。
少し朦朧としながら説明を聞き、今後必要なことを整理。
ゆっくり休んでね、といいながら夫は帰宅。
初日から母子同室が叶わなかったのは切ないけど、
しっかりとGCUでみてもらえてとても安心だし、
術後の体を休めるという意味ではひとまずありがたかった。

枕元には吐きそうになった時のための受け皿、
ペットボトルストローをつけた飲み物、ケータイをおいて休んだ。20時台までは産後ハイなのか全然寝れなかったし、帝王切開前日の昨晩から明日の朝まで何も食べれず点滴が全てなので胃が空の状態が続き苦しかった。
尿の管が知らぬ間に装着されており、明日起き上がることができるようになるまではしばらくこれに頼れると思うとほっとしたけど、明日起き上がれるようになるイメージはこの時点では全くわかなかった。
喉がとにかく乾くのでひたすら飲み物を飲み続けた。
足に装着されたポンプのおかげで血栓の心配はなさそうであり、足への圧力というか、ポンプの強弱が一晩中心地よかった。
3時間おきに助産師さんが登場し、搾乳が開始。
シリンジで胸から滲み出る母乳をとり、
初日ではかなり出てる方ですよー!と褒めてくれた。
GCUにいる娘に飲ませてくれるとのこと。

GCUで我が子が元気にしているか少し心配しながらも、
思ったより眠ることができた。

案ずるより産むが易し。
医療技術の高さに非常に感動し、またそのメンバーがかなり若めであることにも驚かされた。
私のお産が今の時代で本当にありがたいなと思ったし(江戸時代とかだったらどうなっていたのだろうと考えると恐ろしい)、何よりも正期産とはいえ、小さな体で元気に産まれてきてくれた我が子にありがとうという気持ちでいっぱいだった。
あとからある助産師さんから「赤ちゃんはお母さんが困ることは絶対にしない。不思議なことにお母さんに負担のないようなことが起きることが多い。あなたのベビーちゃんも本当に賢い選択をしましたね。」と。

命が生まれることの尊さ。
そして親としてこの子を守ることへの責任。
初日から始まった母乳育児をがんばろうという意気込みと自分の体がしっかり順応していることへの喜び…

間違いなく長い長い私の人生のなかで、
記念すべきBIG DAYを無事に迎えられたこと、
そして無事にその日を終えた安堵感を胸に眠った。

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