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「自分で自分を超えるとき」

その夜仕事から戻ると
娘が私を待ち構えたように出迎えてくれた
「遅くなってごめんね」
と一言、彼女から唐突に渡されたのは細長い小箱
そのラッピングからして
一目で専門店のジュエリーの包装だと分かる

「遅くなった」の断りは、私の誕生日プレゼントだという
いやいやすでに半年以上経ち
地球一周で例えればブラジル方面までいってますけど・・・

そんなおふざけな発想とは裏腹に
中に入っていた物は私好みのペンダントだった
それが本物だと一目でわかる
嬉しさ以上に正直言って戸惑う私

「いや、今までろくにプレゼントしたことなかったしな。もう、ほら、春になったら家を出るし・・・ 
いろいろ ありがとうっていいたかったし」
少し視線を外しながら照れたそぶりを見せる娘

その瞬間、私の記憶の中でデジャブが起こった
私が高校を卒業し京都に出て、一人暮らしを始めた頃
母に対して関係性が変わったと自覚した時の景色だった

下宿暮らしの様子を心配して京都まで上京してきた母と、河原町を二人歩いているシーンだった
母は雑踏の中を歩きなれないのか戸惑いを感じさせる足取りで、私は対向者とぶつからないように母の肩をかばうように支て足並みを揃えた
その肩は思った以上に小さくか弱かった

ただ、一方的に甘えるばかりの自分から
もう、どこかで母を護る立場にならないといけないと気づいてしまった、あの日のことを

それは私が大人にならなければと自分を鼓舞する一方で
もっともっと甘えるだけの自分でいたかったさみしさもあり
複雑な感情と戸惑いを感じたあの日の自分を

そうして一歩ずつ大人の階段を登っていっていた

娘になんとなく同じ想いを感じてしまったのだ
その、成長していこうとする気持ちを親のエゴで止めてはいけない
彼女は私にこの贈り物をすることで
ただ子どもだけだった自分と決別したかったのだろう

ただ与えてもらう喜びから
人に与えることが何倍も豊かな気分になることを
こうして体感し、確認したかったのか
何度も「ママ、嬉しそうやな」と私の様子をみながら、その言葉を繰り返し言った

それだけ今、彼女の心の環境が整って
次なるステージへ進もうと
自分を肯定できている状況なのだと思う
私も、娘の旅立ちまで残すところ1か月
彼女の決心を受け止め、その旅立ちを見守っていかないといけない

その覚悟を促された気がしたのです

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