見出し画像

鬼灯(ほおずき)

また今年も「ほおずき市」が始まりました
お供えに欠かせないほおずきは、
子供の頃、赤く熟れた実で笛を作るのが楽しみで
葉脈だけのレースになるのを待ちわびて
貴方と一緒に遊んでましたよね

ほおずきの花言葉を知ったのはいつでしょう
「偽り」「ごまかし」「欺瞞」
それは、貴方を裏切ったまま永遠のお別れとなり
手を合わせに行った盆棚の中にありました

貴方の気持ちを知りながら
気のいい頼れる幼なじみだと
自分が弱い時だけ頼ってしまってた
それでもいいよと、肩を抱く優しさに
甘えてしまった私は
最後の最後で応えることができませんでした

若かりし頃の過ちで済むと信じてた
また、いつかゴメンねと言って
元の幼馴染に戻れると信じてた

あまりにも早すぎた貴方の死は私の心の中に
決して消えることのない後悔となりました

ー あれから毎年、ほおずき市に行くのです

この日に行けば四万六千日の功徳が得られると
人の一生に数えれば百二十六年
鬼灯とも書く
提灯となって連れてきてくれるはず

激しい刺激的なロマンスよりも
静かな湖面のように側にいるだけで心が落ち着く愛の大切さ、今なら分かるのです

ほおずきを競って鳴らしていたあの頃に
このままもう一度戻れるならば
私は、素直にその思いを受け止められたのかもしれません

「もうそれは済んだことだから」

気がつけば、うなだれた私の頸をかするように
温風至が囁いていきました

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?