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惚れたが悪いか

ほらほらまたそうして
ゆきずりの女を目で追うのですね
飽くことのない欲情に
子どものように感情をむき出しにする貴方
 
素直すぎる感情の吐露に戸惑いながらも
いつしかその勢いに流されて
つい陥落してしまう女性を
何人見てきたことでしょう
 
すると貴方は悪気もなく
屈服して従順になった女性を認知したとたん
今日のゲームはもう終わったのだと
捉えた獲物には興味がないといわんばかりに
また次の標的を探し出すのです
 
男として最低でも
彼氏として最悪でも
その業も欲もエネルギーに変換し
類まれなる表現者として才能を開花する貴方
 
呆れてしまって声もでないけど
悔しくも認めざるを得ないほど
貴方の文筆に惚れこんでしまいましたから
ある意味お互いさまなのかもしれません
 
誰もが持っているものを手放して
貴方しか持っていないものを掴みに走る姿は
世の中の評価に囚われず貴方を追い求める私と同じ
求め求められ二人でとことん堕ちていくのです
それを才能というならば
この苦しみも甘美なものとなりましょう
 
そうしていつしか私も悪女となって貴方に言うのです
「惚れたが悪いか。太宰治」

                                         by 津島美知子

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