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羽二重餅

「ねえ、これもいいでしょ」

そういって両の腕を
あなたの顔の前で心持ち掲げてみた
洋ナシの少しだけ瑞々しさが失われた時の様な
私の柔肌はすぐにリバウンドすることなく
ゆっくりとあなたがつけた指の跡を残していた

あなたは、いたずらがばれた子どものように
バツの悪そうな表情を浮かべ
私からほんの少し距離をおいた

「もう あなたの意地悪な言葉にすぐに反応したり
 強引なお誘いに 汗を弾かせたりはしないのよ」

未熟さを若さと酔いしれていたときはもう終わり
どれだけ貴方を欲しても
昔の様に激情をぶつける私ではいられない

哀れまないでね
失うものにいつまでもしがみついていた頃より
むしろ自由で軽くなった気がするの

だからお望みなら
この腕であなたを包んで頬ずりさせてあげる
うずめる程に沈みゆく羽二重餅のような感覚も
おつなもの
きっと深く眠りにつけることでしょう

もうそこに秋は忍び寄っている
そろそろ大人の遊び
一緒に楽しんでみませんか

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