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からすうりの花

私のどこがいけないというのでしょう
ただ静かに貴方を想い
こうして胸に詰まる想いも必死で胸に収め
真夜中にしかその姿を見せないように
自分を抑えていますのに
 
私はからすうりの花といわれます
月明かりの元、輝きを増す白い花は
夜、蜘蛛が糸を吐くように
細い繊維の花びらを広げ
闇世の中で妖しく光り、虫をおびき寄せます
 
誰でもいいというわけではないのです
ポリネーターは貴方しかいないのです
一夜限りの命ながら
花弁の奥の長い花筒は
スズメガのように長い口吻を持つ
貴方しか受け入れることができない私の覚悟なのです
 
想いが募れば募るほど 
口数は少なくなっていきます
マグマのような感情がほとばしるからでしょうか
絡みつく蔓の先では実が紅く熟し
焼け出されたような黒褐色の種子がつくられます
 
種子は結び文の形に似ているところから
別名「玉章」(たまずさ)とも呼ばれます
だからこうして文を綴るのです
冷静になりたいと筆を運ぶのです
終わることのない巻紙は
いつまでもさらさらと床に紙の海を広げていきます
 
素直な気持ちをさらけ出すのはいけないことでしょうか
昔より追えば逃げ、逃げれば追いたくなると
恋は駆け引きが大事というけれど
不器用な私はこのままでしかいられないのです
 
いい娘でいることを頑張って
貴方に迷惑をかけないようにと思えば思うほど
貴方は「君は一人でも大丈夫な娘だから」と
他の頼りなさげな女性の肩を抱いて消えていきました
 
どうせ泣くも笑うも今宵限り
こんな無様な姿とわかりながら
カウントダウンを心で唱えつつ花弁を開かせるだけ
そんな生き方しか出来ない
私の気持ち 分かってくださいますか
 
私はからすうりの花なのです
 
 

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