プアゾン
それは「毒」という名がついた香水、詩人 ポール ヴァレリーは「香りは心の毒である」と詠った
プラム、バニラ、コリアンダー、アニス、ジャスミン、白檀、紫檀、月下香、、シナモン etc・・・様々な成分を絶妙にブレンドさせたというこの香水は元のそれぞれの香りを想わせる気配は微塵もない。
爽やかなバニラが似合う恋もした。耐え忍ぶ月下香のような別れも味わった。白檀の香りが似合う淫靡な火遊びもしてみた。
すべての過去が混ざり合ってあの独特の香りが生れるとしたら、プアゾンは恋多き女性にこそ似合う。
今逢う彼のためにつける香水ではなく、いつまでもあなたにつけておきたい残り香としてその存在感を放つ。
記憶は男の奥底に沈み込み、その香りに不意に遭遇するだけで一気にあの頃に引き戻される。
だから、常にこの香りの回りには別れの影が付いてくる。けっして成就することのない恋、だけど忘れることももう出来ない。
1985年、パルファン・クリスチャン・ディオールが生み出した傑作。本物の大人の女性にだけがつけることを許される一品。
誰もが選びたくなるようなモノではない
付ける人を選ぶ香りでもある
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?