ハレの日とケの日

3月、もうしばらくすると私の住む町に流れる長祖川沿いの遊歩道は、ちょっとした賑わいとなり人の笑顔があふれる。

小さな川の両側に並ぶ桜並木が、びわ湖のほとりまで立ち並びそれは、それは見事な桜のトンネルを作ってくれる。
川の傍には、幼稚園、小学校・中学校のグランドと続き、子供たちの元気な声が彩りを添える。

※sand fingfr 白井 明輝子さんより

観光客を呼ぶような派手な仕掛けは何もなく、満開の1週間だけライトUPされる。
この町の人のために、住人が育て守り続けた桜並木、そんな印象がある。

桜というとその昔、息子が習っていた少林寺拳法の大先生が言った言葉が忘れられない

「桜のような人間になれ」

桜は1年間 花が咲く時期ほんの一週間だけ人が注目してくれる。
そのために、あとの350日余、誰に見てもらわなくても日々一生懸命生き、枝を張り、若葉を茂らせている。
人生ハレばかりの日でなく ハレとケがあるからこそハレの日が輝くのだと
その、誰も注目をしない毎日をいかに生き続けるのが大切かと説いてくれた。

その頃息子はまだ1年生になるかならないかだった。
きっと、そんな話は記憶の片隅にも残っていないだろう。その場ですら、意味も分かっていなかったと思う。

でも、大先生の言葉に一生懸命耳を傾け、姿勢を正して聞かなければいけないと幼心にも思ったのか、彼の背中はまっすぐだった。

私は、その初めて見る子供の凛とした姿と共に大先生の言葉が深く刻み込まれた。

春になって、こうして30年近く駅まで歩き続けた桜並木を見上げる度にふとこの言葉を思い出す。

仕事も同じ、ハレの日なんてそうそうない。祭りのように華やかなイベントが終わればあとは、せっせと年輪を重ね見えないところで根を張らしていくだけ。

それでも春になれば、いつも下を向いて歩く人々が嬉しそうに上を向いて桜吹雪を眺めて心待ちにしてくれる。

私も桜のように仕事を続けていく

そう毎年誓うのです。

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