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サハラ砂漠の夜明け

サハラ砂漠の夜明け
砂で形作られた表情は 艶やかでどこまでも色っぽかった

朝日が昇る直前の砂の山の稜線は
ローズサンドの赤味を帯びて
バストラインのように形造られ妖しく光る
その山の頂は砂風が起こしたいたずらからか
若い肢体のようにツンと尖っている
思わず頬を寄せたくなる愛らしさ
だけどこの見事な自然のアートも
二度と同じ景色に出会うことはなく
明日になれば全然違う姿を見せているのでしょう

母なる大地
これほどまでに言葉と情景が
見事にはまったと感じたことはありませんでした
星明かり以外何も見えない暗闇の世界で
深々と冷え込んでいたサハラ砂漠も
一旦朝日を浴びてしまえば
見る見る間に息を吹き返し
瞬く間に砂は熱を帯び
柔らかな砂肌を見せてくれました

砂漠に住み続けるベルベル人の生き様は
自然と共存して語られます
喜びも悲しみも
自然の摂理、時の流れのままに
砂嵐が起きてしまえば
今ある形はなくなり
全ては無に帰り
そして全てを覆い尽くされてしまう

その時人々は無駄に抗わず
「ベルベルウェイ(どうとでもなる)」と呟いて時が過ぎるのを待ち
そして平穏が再び訪れれば、また何事もなかったように同じ営みを繰り返す

きっと仕えるアラーの神が
私の不都合なことをするわけがない
そう信じきっているからなのでしょう

誰にも騙されないよう
傷つくことのないよう
人を疑い保身に走るより
全ての身をゆだね
あなたが私のためにならないことをするわけがないと
そう信じてしまえることの幸せ

それは、こうして
何があってもありのまま受け入れ、変わらぬ日々を繰り返してきたこの悠久の歴史が
人々の信じる心を強くしてきているのでしょうか

不自由にしか感じない彼らの生活だけれども
こころがどこまでも自由なのだなと
まるごと自然に身をあずけて
日々に縛られず過ごす彼らは
実に誇り高く姿勢をまっすぐ伸ばして
いつも私たちの前を歩いてくれました

その存在を信じきるということは
そんな自分を信じているということ
まっすぐ見据える瞳に現れているのです
そのその砂漠の生活で鍛えられた逞しい背中思わず惹かれてしまいます
そして見知らぬ彼にいつしか惚れてしまいそう

私もなれるでしょうか
いえ、なりたいと覚悟を決めるのですね

あなたが私のためにならないことをするわけがないと
まっすぐ見つめることができる強い私に
サハラの砂のように
全てを優しく包み込めるような私に

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