媚薬
背中の窪みをなぞられて
指を下から上へと書きあげられる度
そこだけ軽い掻き傷が出来たように
赤い筋が浮き上がるのです
これは麻薬か媚薬なのか
脳の一部がマヒしてくるの
少し歪ませた表情から薬指の震えを
他人ごとのように眺めながら
自由に動けるはずと分かっていても
見えない糸が私を縛ります
忘れていたはずなのに
指先から感じる体温を身体が覚えていました
都合の良く自分が見えないということは
一瞬にしてあの頃に戻れるのですね
もがけばもがくほど蜘蛛の糸は絡まって
心の中までがんじがらめに取り込められた
認めたくはないけれど
密かに喜んでいるもう一人の私もいるのです
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