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その声を聞いただけで
こころがあったかくなり、赤子のように安心できる
そんな風に感じたことはありますか

「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」とあるなかで
自分の感度が一番繊細なところは?
そう聞かれたら私は迷わず「聴覚」と答えるだろう
一番好きなのは耳元で囁かれること
子供たちが幼い頃
「秘密のお話」、柔らかいほっぺをくっつけて
耳元でこっそり教えてくれた
そんなときが至福の喜びだった
くすぐったくて息があったかくて
意味もなくギュッと抱きしめていたっけ

きっとそれぞれに感じるところは違っていて
それが案外仕事と繋がっていそう
味覚にこだわりを持つ人は料理人
写真家の友だちはきっと「視覚」が特別なフイルターでできているに違いない
工場でミリ単位より小さな誤差を感じ取る旋盤の技術者は触覚が研ぎ澄まされ
香水の調合師はもちろん鼻が効いていないと話にならない

声を商売道具にして二十数年経つ内に
いつしか私に取って「声質」は敏感に感じるポイントとなった
その声で相手に対する印象が左右されていることがわかる

どんなに才能があって、鋭いコメントを残すタレントも声が受け付けない人はそれだけでOUT
声質だけでなく
ちょっとした声色、言葉の端々ににじみ出たトーンの変化、そこからも相手の感情がこぼれてるのが分かる

話すことは何もなくても
その声を聞きたくて
携帯を握り締める時がある
目の前にいなくて、そのほかの感覚が鎖されるからこそ、聴覚だけにますます集中して感度が高まる
子供たちも大きくなってもう囁いてくれることもなくなった

冬の寒さは耳がしばれるところから身に染みてくる
まだまだ続く厳寒の日々
極上の声でそっと耳元で囁いてくれる方、そんな魔法の声を無意識に探してしまうのです

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