波紋
スポイトで朱色を一滴、水の上に落としてみた
きれいな球体になって落ちていった絵の具は
水の表面で軽くリバウンドし
小さな凹みを付けると波紋を作りながら
徐々にその朱が水を染めながら広がっていく
堕ちてしまえば一瞬だった
掌から指先の神経の先の先まで
貴方の色に染め上げられて
私の耳の付け根はほんのり熱くなった
広がりきった朱色は
瞬く間に水と馴染み
にじんだ色目の差を感じない程の
ほんの些細な出来事となりました
水面はまた依然と同じたたずまいで
ゆらりと風に吹かれて揺れるだけ
だけど自分では分かるのです
その朱きモノがすべてを薄いベールで覆いつくし
昨日までの私とは
まるで違う女になってしまったことが
蜘蛛の糸より細く織り上げた
目に見えない糸で身も心も縛り上げられている
自由でいていいのだといわれても
どんどん不自由な女になっていく
そんな自分が嫌じゃない程
私は尽くす女だったのでしょうか
いえ、ただの愚かな女だけのこと
誰が枷をつけているわけでもない
自からはまって堕ちていっているだけなのですから
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