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横顔

その寝顔はとても綺麗だった
顔を間近に近づけて
横顔を眺めていると
まるで陶器のように
すべらかで
そしてどこまでも静かだ
耳をそばだて
ようやくかすかな寝息を感じる程度

あまりにも気持ちよさげに寝ているので
起こすこともためらわれ
何をするのでもなく
じっと側にいる
その時間が嫌ではなかった

ギリギリまで照明を落とした部屋で 掘りが深い分くっきりと浮かび上がるアウトライン
額の丘陵を経て高くそびえ切った鼻の頂上からなだらかな顎の先まで
無駄のない稜線はアルピニストが一度は頂上を望みたい
そんな気持ちを起こさせる

どこまで登れば
あなたの気持ちを掴むことができるのでしょう
登った先の頂上からは
まだ見ぬ景色が見えるのでしょうか
そこに山があるから登るのだ
誰かが言った有名なセリフ
その山を目指すのは
私にとっても必然だった

こうして無防備に
横にいることを許してくれるのが
私への気持ちの表れなのか

甘い言葉より
優しい眼差しより
記憶にいつまでも残るシーン
いつまでもその横顔を見つめていたいと思った
それが全ての始まりだった

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