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「初恋」

私の恋の始まりは幼稚園の頃だった
卒園も間近の生活発表会
おませな私は一人の男の子と既にラブラブだったらしい

それはお遊戯でアイスクリーム王子に選出されるくらい人気者のT君
「僕のお嫁さんになってね」と
文字通り王子様になって突如現れた

昨日まで鼻水をスモッグの裾でぬぐってたT君だったが
衣装を着て王子様に扮すると
馬子にも衣装、どうしてなかなか凛々しく見える
また、その時の先生が
王子様になった男の子たちにその時ペアになるお姫様を選ばせるなんてことをしたもんだから、モテようがモテまいが
同じ女として負けられないという本能が炸裂したのか、壮絶な戦いが繰り広げられた
いや、きっとそうだったに違いない

どうやら私はそのT君と相思相愛だったにも拘わらず
違う男の子と組んで踊ることとなり
絶望に打ちひしがれたことを覚えている

どうしてこんなに彼の事を覚えているかというと、よくお誕生日の時に創るミニアルバムのアンケートに
将来なりたいもの
「およめさん」
好きなお友達
「○○ T 君」
はっきりと書かれ、親からさんざん冷やかされたからだった

ところが、私は少し家から離れた幼稚園に通っていたからか、そのT君とは小学校が違う隣の学区となり
ロミオとジュリエットのごとく、卒園すると離れ離れの人生を歩むことになった

その彼と再会したのは中学の時だった
もちろん幼稚園以来一度もあったことは無かった
マンモス校で1学年が13クラスあったから
出逢うのも至難の業
結論からいうと一度も同じクラスになることも結局かなわなかった

ところが、彼とは運命の再会が仕組まれたのが中学2年の時、
そのT君が生徒会長になったのだ
生徒会長と名前が読み上げられた時
それまで半分忘れかけていたはずなのに
フルネームでT君の名前を呼ばれた瞬間
ミニアルバムに書かれた文字が頭に浮かび
あの幼稚園の時のことを突如思いだしたのだ

そして急に何故だかドキドキし始めた
何故なら私も生徒会の会計になることが決まっていたから

実は、この時副会長になったO君も
私が小学校2年生の時初めてラブレターなるものをもらいお付き合い⁉︎をしていた元カレだった
幼稚園と小学校低学年、この短すぎる人生の期間において
もう過去の男が二人もニアミスしている
私はモテすぎる自分の運命を呪った

そしてその呪いは効きすぎたのか
二人とも全くそんなことを忘れてしまったかの如く、私たちは毎日放課後一緒につるんだ
彼らは会計の私を守銭奴のように罵倒し
予算をぼったくり
その責任を全て私になすりつけた(半分嘘)

出来れば時を戻して再会することもなく
淡い恋心の思い出に浸ったまま
思い出を封印していたら
どんなに良かったかと何度思っただろう

おかげで私は再燃する恋という案件にこれっぽちも悩むことなく
女性にしておくには惜しいとお墨付きを頂き
実に豊かな思春期を共に過ごした

そしてその友情は卒業式近くになっても最後まで続いた
もちろん二人とも第二ボタンは
とっくに他の女性にとられてた
二つ目どころか一つ目三つ目
追い剥ぎに遭ったかのように
もみくちゃにされた学生服を
英雄のように着て卒業の門をくぐってた

あなたの初恋は?と聞かれると
この二人の顔が浮かんでくる
あまりにもおまぬけで
相手からもすっかり忘れ去られた
恋とも全く呼べない恋

だけどその後のドラマチックな恋愛が
どんなに美しくても
私にとって初恋とはやっぱり幼稚園の時なのだ
既にひとりは空の上の虹になった。相変わらずアホなことしとるなぁとみていてくれているのか。

もうひとりは、実はSNSで三たび再会した。
でもきっと記憶の彼方で忘れ去られているのだと思う
それでもお互い元気な内に会えて良かった

人生半世紀も過ぎると
それは全て口の中の砂糖菓子のような
淡い思い出でとなり半分夢うつつなところがいい

「記憶にございません」と言われても
笑って許してあげる(๑˃̵ᴗ˂̵)❤️

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