立ち止まるから、気づくこと。
なかなか体調がすぐれない春。
暮らし、装い、食など、心が動いたジャンルのエッセイを
気の向くままに手にし、時間を見つけては
ソファに横になって、少しずつ読み進める。
軽やかに暮らしていらっしゃる方々の姿を垣間見ると
自分が過ごしている見慣れた部屋も、
自分の見ている世界も、
どこか違ったもののように感じられる。
停滞した感覚、よどみが少しクリアになった気がして
心の底に残っていた、かすかなやる気がうずく。
昨日読み終わった、
西村玲子さんの『いつも、おしゃれで。』
西村さんと言えばあの、温かみのあるタッチのイラスト。
表紙には、テイストの違う洋服を着た4人の女性が描かれている。
きっと着こなしのアドバイスが込められた本なのだろうと思い、
閉館間際の図書館で、さっと手に取り
貸し出し手続きを行った。
家に帰ってよく見てみると、この本は
約2年半にわたって毎日新聞に掲載された原稿を
再構成し、書籍化したそうだ。
春、夏、秋、冬と
季節の移ろいに合わせた服装と、
それにまつわる映画、インテリア、食べ物、
西村さんがお出かけされた際のエピソードなどが満載のエッセイだった。
本の後半では、西村さんが入院されたことがわかる。
そして私には、「立ち止まって、気づく」という項が
特に強く心に響いた。
物事の終わりは必ずやってくる。それを機会に新たな展開に向かっていく。希望を見出す。思い切って捨てる。諦める。飽きてしまったことを認める勇気を持つ。病気になったことから、多くのことを学んだように思う。
―略―
自分の中にたくさんある欠点や、弱さにいつまでも気づかず、気づかないことをいいことに、放置したまま生きて、死んでいくところだった。だからこうして立ち止まる機会をいただいて感謝する。それを知るための病気だったのだと思う。
大病された西村さんの、こうした言葉。
今の自分に寄り添うように響き、涙が出そうだった。
私も、起き上がれない日々が続いた中で
自分の欠点、弱さ、見ないふりをしていた部分を直視した。
いや、今も気づかなかったふりをしたいくらい
つらいと言えば、つらい。
自分でも隠していたことを目の前に突き付けられたようで
大人になっても、びっくりするほど成長していないなあと
あきれるやら、がっかりするやら。
そんな自分に嫌気がさすが、
西村さんの言う通り、立ち止まる機会をいただけて感謝すべきなのだろう。
あれも、これも、と
両手にいっぱい抱えることが難しくなった。
これからは、あれか、これか。
何が必要で、大切で、守りたいのかを見極める。
そして自分の選択を信じ、それをつかめる
こころと体の余裕を持とうと思う。
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