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第三章 手続き編②(限度額適用認定、口座確認、生保手続き、会社挨拶、戸籍謄本)

一人暮らしの独身の弟が意識不明で入院した。その時、家族は何を、どんな順序で、どのように手続きしていけばいいのか。遠方に住む場合はどうすべきか。(家族が意識不明で入院した時しなければならないこと~倒れた弟は遠方で一人暮らし、独身、会社員~第5回)
第1回はこちら

1.「限度額適用認定証」を申請~窓口で支払う医療費が安くなる

とにかく大急ぎですべきなのが、加入している健康保険組合へ「限度額適用認定証」(住民税非課税の場合は「限度額適用・標準負担額減額認定証」)の申請だ。

ただし、70歳~75歳未満で所得区分が一般、現役並みⅢ(標準報酬月額83万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割)の場合は、限度額適用認定証は発行されない。75歳以上は「後期高齢者医療制度」が適用されるので、ここでは述べない。

これがあれば、医療機関ごとにひと月の支払額が自己負担限度額までになる。年収と年齢によって、自己負担限度額は異なる。
仮に医療費総額が100万円だとすると、いつもの「健康保険証」だけでは自己負担額は3割の30万円。
しかし「限度額適用認定証」も併せて病院に提示すれば、70歳以下の標準報酬月額28万~50万円(国民健康保険は所得210万円~600万円)の場合、1カ月87,430円で済む。

自己負担限度額(69歳以下)協会けんぽHPより

加えて1年以内(1月~12月ではなく、診療を受けた月から1年)に3カ月(3回)以上高額療養費に該当していた場合は4カ月(4回)目から1カ月 44,400円(多数該当)とさらに安くなる。

だが実際に病院へ支払うのは、この額に食事代、保険適用外の検査や差額ベッド代、診断書作成料などを加えた額なので、注意が必要だ。

保険証の「保険者名称」を確認して、加入している健康保険組合や共済組合のホームページで、「限度額適用認定証」の申請手続きを確認しよう。
通常は、申請書類をダウンロードして必要事項を記入して健康保険組合に郵送する。郵送先は患者本人の自宅でなくても、OKだ。弟の場合も私の自宅を送付先にし、10日ほどで届いた。
「限度額適用認定証」を受け取ったら、病院窓口に提示する。会計の締め切りなどもあるので、速やかに提示しよう。

図やHPは65歳以下で最も加入者の多い(厚生労働省「日本の保険制」)全国健康保険協会(協会けんぽ)から引用。

限度額適用認定申請書の記入例(協会けんぽHPより)

「限度額適用認定証」の有効期限は健康保険組合によって違う。「限度額適用認定証」に記載されている有効期限の日付を確認しておこう。自動更新はされないので、入院が長引いている場合などは再度申請が必要だ。

収入ごとの限度額など、詳しくは患者が加入している健康保険組合のホームページ、国民健康保険の場合は自治体のホームページをチェックしていただきたい。



2. 銀行口座の確認~暗証番号がわからなくても窓口で振り込める

月末には病院の支払いがある。入院費などを支払う患者本人の銀行口座を確認しよう。キャッシュカードがあればATMで振り込める。

しかし、通帳、印鑑、キャッシュカードがあっても暗証番号がわからない時はどうするか。本人以外は現金を引き出せない。
弟の通帳などはすぐに見つかり、残高を確認して支払えそうだと安心したものの、数年に一度会うだけの弟の暗証番号など知る由もない。

「口座にお金があっても入院費を支払えないのか」と途方にくれたが、銀行に問い合わせると、宛名が弟の名前(口座名義人)の請求書で「明らかに弟(口座名義人)本人のための支払い」であれば、限度額があるものの、店舗の窓口で私が弟の口座から振込手続きができることを確認した。
※2021年2月18日に全国銀行協会が示した「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」(公表版)

アパート退去時の不動産会社への支払い、毎月の医療費と社会保険料を窓口で振り込んでいる。

ただ、上記の「考え方」について知らない行員も多く、事情を説明させられたり、身分証明書を提示しろなどと言われるケースもある。心配な場合は銀行のカスタマーサービスで問い合わせも可能だ。

また振込用の用紙は、店頭の記載台にあるラックには置かれていないことがほとんどだ。

弟のように紙の通帳があれば収支が一目瞭然で、店舗から振込もできるが、問題はネットバンクの場合だ。慌てずキャッシュカードに記載の電話番号に問い合わせをし、「入院費の支払いをしなければならない」と相談しよう。

とにかくあきらめずに相談すること。地銀や信用金庫は特に親切だ。

3.生命保険の請求手続き

 加入している生命保険会社の担当者に連絡しよう。その案内に従って、病院で診断書を取得して手続きをすれば、数週間で保険金が受け取れる。尚、診断書は病院によって違うが数千円程度費用がかかる。

健康保険制度や条件が当てはまれば自治体から様々な給付金等を受けられるので、生命保険は必要がないという人もいる。ただ、どんなに急いで手続きをしても、給付を受けられるまでに入院してから数か月後になる。入院した月末には医療費が請求されるため、医療費を支払える経済的に余裕があればよいが、弟ががん保険だけで一般の生命保険に加入していなかったのは、精神的にきつかった。火急の事態には最低限の生命保険は有用だと実感した。
 

4.会社への挨拶

勤務先の人事担当部署にアポをとろう。休職に関する手続き等や、社内の手当などについて相談する必要がある。労働災害なら「労災保険」、仕事中以外の病気やけがなら「傷病手当金」を申請するために、毎月、書類の作成等をしてもらう必要がある。

5.「戸籍謄本」を取得

携帯電話解約や保険解約などの代行手続きをする場合、名義人との関係を証明するために、「戸籍謄本」原本の提示またはコピーの提出などが求められる。結婚などで同じ戸籍に入っていない場合は「改製原戸籍謄本かいせいげんこせきとうほん」が必要だ。遠方に住んでいる場合は郵送で取得できるが、10日ほどかかってしまうので、早めに手続きしておこう。

本籍地の自治体で取得する。本人確認ができる証明書が必要。
郵送で取得する場合は、該当の役所のホームページで申請書をダウンロードして記入し、手数料分の郵便小為替、返信用封筒(送付先住所と宛名を明記し、切手を貼る)を同封して自治体に送付すると、1週間ほどで返送されてくる。

戸籍謄本 手数料450円
原戸籍謄本 手数料750円



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