見出し画像

ペクトラジ  第七部 「遊び場は練兵場」

南北朝鮮は、北は「朝鮮民主主義人民共和国」、南は「大韓民国」で、
それぞれ略して「北朝鮮」「韓国」と呼ぶのが通例であるが、
下関ではどちらも分けることなく「朝鮮」と呼んでいた。
従って、実際には「韓国部落に住む韓国人」であるが「朝鮮部落の朝鮮人」と呼んだ。

そして下関では朝鮮人に対する差別は激しく、ましてや部落のような不衛生な場所には誰も近寄らない。

そのような状態にあっても、剛は平気で部落に行き子供たちと遊ぶ。
そのような交流を重ね、剛はパク家の息子なみの待遇を受けることとなる。

パク家のある部落からみて、西側が失業対策事務所で、さらにその向こう側が練兵場なので、至近距離である。
そこで部落の子供たちは練兵場に集合して遊んだ。

広大な練兵場で、剛は少女をビンビク(肩車)して走り回った。
儒教社会において、年上は絶対的な権威をもつ存在である。
ビンビクも上に乗るのは年上である。
これも兄妹扱いの所以であろう、年下の少女
も気兼ねなく楽しそうに肩車に乗った。

韓国では通常肉親以外の呼称で、「オッパ(おにいさん)」「ヨドンセン(妹)」という言葉は使わない。
剛は身内の兄弟として迎え入れられたため、少女は剛を「オッパ」とよんでくれた。
剛は言葉がうまく聞き取れなかったせいか、少女のことを「ヨドセ」と呼んだ。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?