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デッキ選択 PTQ突破に向けて

本記事ではPTQ等のトーナメントに参加するに当たり、僕がどのように考えてデッキを選んでいるかを記述します。

幸いなことにSCG主催のSet Championship予選を2期連続で突破し、ZNR CS, KHM CSの権利を獲得することが出来ました。
自身の成功を振り返ると、共通しているのは「良いデッキをプレイしているとき」でした。過去4度PTQに相当するトーナメントを突破していますが、いずれも例外なく良い選択が出来たと思います。
プレイが秀でていてもデッキが悪ければ敗北は必至。トーナメントのレベルが上がると、それはより顕著に結果に顕れます。(僕の場合はプレイも良くはないので恐ろしい結果になります)

今回は今時点で僕が考えていることを記録するとともに、自分と目標を同じくするプレイヤーの参考になればと考えて記事化することとしました。

具体例を挙げる際は2020年12月現在のヒストリック環境について記載しています。これは直近で僕が取り組んだフォーマットがヒストリックであることに起因します。ヒストリックに馴染みの無い方には伝わりづらいかもしれませんがご了承ください。

▼ デッキ選択の重要性

カードゲームにおいて勝敗を分かつ要素はデッキ・プレイ・運の3要素だと考えている。対戦相手のプレイスキルが自分と同格あるいは格上である場合、デッキの良し悪しで優位性を確保する必要がある。(もちろん運の良し悪しはあるが、これは自分で制御出来ないのでここでは取り扱わない。)
プレイスキルで大きな差が出ない場合、自分が強いデッキをプレイしたり、流行りのデッキに相性の良いデッキをプレイすることはトーナメントを勝ち抜く上で大きな助けになる。

▼ 弱いデッキを選ばない

ここでいう弱いデッキとはデッキパワーが低いデッキを指している。
弱いデッキが持つ要素として、「1回のミスがゲームに敗北に直結する」、「デッキに入っているカードが弱い」、「ブン回りが少ない」、「マリガンに弱い」などが挙げられるが、こういった要素を複数持ち合わせたデッキは大抵弱い。
弱いデッキかどうかを判別する手段だが、「デッキリストの内容で判断する」・「大会の結果を見る」・「実際にプレイしてみる」などの方法を取る。

デッキリストの内容で判断出来るものは人それぞれの経験に依るところがあると思われる。採用されているカードの持つ特性やメタゲーム上の立ち位置などをどのくらい把握しているかで判断出来る内容に差が表れるはず。

大会の結果を見るのは参考にする大会が必要になるが分かりやすい。例えば、2020/11/22に開催されたSCG Tour Online Satellite #7で6-0を記録したマルドゥ機体。6-0というスコアは注目に値するものだったが、その後のヒストリックトーナメントで目立った成績を残すことは無かった。実際にプレイしたことはないが、恐らく弱いデッキだったのではないかと予想出来る。

実際にプレイしてみるのは手間がかかるが一番分かりやすい。デッキの強弱は大体自身の戦績に反映される。(ただし、プレイに際して専門的な知識を求められるデッキはこの限りではない。)

ここで、最近のヒストリックでちょっと話題になったデッキを例に紹介する。
カラデシュリマスターの追加とともにヒストリックでプレイ可能になったティムール霊気池だ。

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(サンプル。MPL選手の誰かが配信でプレイしていたデッキですが、誰のものか失念してしまいました。)


プロツアーアモンケットにおいて高いパフォーマンスを発揮、最終的に《霊気池の驚異》の禁止という形でスタンダードから姿を消したデッキだ。
デッキの動きを簡単に紹介すると、《霊気との調和》や《ならず者の精製屋》のようなカードでエネルギーを貯め、《霊気池の驚異》を設置・起動して《絶え間ない飢餓、ウラモグ》や《精霊龍、ウギン》の踏み倒しを狙う。
カラデシュリマスターのリリース直後に多くプレイされたが、翌週のトーナメントでは全くと言っていいほど活躍しなかった。デッキが弱かったのだ。
僕も実際にプレイしたが、ラダーで0-6のスコアを叩き出してデッキを削除した。弱いと感じたポイントは以下の通り。

1. エネルギーを貯めるアクションが弱い
エネルギーを貯めるカードのパワーがヒストリック環境でプレイするにはあまりにも低すぎた。
ゴブリンのマクサスは最速3ターン目、大体4~5ターン目にプレイされて圧倒的な盤面を作り出す(あるいはゲームを終わらせる)。一方このデッキは1~2ターン目に場に影響を与えないアクションでエネルギーを貯め、3ターン目に3/2をプレイするのだ。

2. 《霊気池の驚異》の"外れ"を許容出来ない
弱いアクションを重ねながらエネルギーを貯めることで《霊気池の驚異》を起動するわけだが、大体1回目の起動で《絶え間ない飢餓、ウラモグ》や《精霊龍、ウギン》を見つけられないと返しのターンに敗北する場になっている。
スタンダード当時は大当たりでなくとも《つむじ風の巨匠》なんかが捲れれば次のターンの起動が見込めたと思うのだが、ヒストリック環境ではそんな余裕がなかった。

3. 環境にアーティファクト破壊が多い
これはデッキそのものというより環境的な問題でもある。
ゴブリン、サクリファイスといったデッキは《墓掘りの檻》対策にアーティファクト破壊を大量に採用しているケースが多い。これが《霊気池の驚異》に刺さる。何も悪いことをしていないのに勝手にメタられている。

上述した理由から僕はこのデッキを弱いと判断したが、その後の大会結果を見ても正しかったと思う。
大事なトーナメントに弱いデッキを持ち込まないためにも、何かしらの手段でデッキの強弱を判断したい。

▼ デッキ間の相性を認識する

トーナメントでプレイされ得る主要なデッキ間の相性を認識することは、後述するメタゲーム予想の後に正しいデッキ選択をするために必要になる。
デッキ相性の話は難しく、他人と自分の認識が違うこともままあるし、採用されているカードによって相性が逆転するケースすら存在する。
現在は自分でテスト・予想した結果を友人との会話・Web上で見られるやりとり・配信を見るなどで擦り合わせている。
今時点では概念的な説明が出来るほどの知識が自分に無かった。大切な部分であるが故に難しく、上手く説明することが出来ない。
現状、知識・経験不足は情報収集という形で補っているが、認識に相違があったことも少なくない。
この項については「重要である」ということを記して、詳細な説明は今後の課題とする。

▼ メタゲームを予想する

目的はトーナメント中でマッチングする可能性の高いデッキに対して相性の良いデッキを選択することにある。
直近で開催されたトーナメントで好成績を残したデッキや、そのデッキに対して相性の良いデッキが増加する傾向にある。それらのデッキに対して相性の良いデッキを選びたい。
参考にするものは直近で開催されたトーナメントのうち、自分が参加するものに近い規模であったり、参加者の層が被っているものとする。PTQに向けた準備をするのに近所のFNMの結果は参考にならない。PTQにはPTQのメタゲームが存在するし、FNMにはFNMのメタゲームが存在する。

ここで、直近僕が優勝したSCG $5K Kaldheim Championship Qualifier(以下CSQ)の予選にあたるSCG Tour Online Satellite(以下Satellite)の結果を掲載する。
CSQに出場するに当たり、その予選イベントであるSatelliteの結果・メタゲームの移り変わりを参考にしてデッキを決定した。

※$5K Kaldheim Championship Qualifier・SCG Tour Online Satelliteについて
日本時間で金曜夜~日曜昼までの間に計8回、予選イベントに相当するSCG Tour Online Satelliteが開催される。
Satelliteで4-2すると本戦の権利、5-1すると本戦権利+本戦における1Bye、6-0すると本戦権利+2Byeが与えられる。
その後、日曜深夜に$5K Kaldheim Championship Qualifier本戦が行われ、優勝者にはKaldheim Championshipの参加権利が与えられる。
SCG Tour Online Satellite #6 2020/11/22 参加者129名
6-0
2 ゴブリン

5-1
4 ゴブリン
2 スゥルタイ
1 ジャンドフード
1 ジャンドカンパニー
1 ディミーアコントロール
1 ラクドスアルカニスト
1 無色ランプ
1 オルゾフオーラ

4-2
7 スゥルタイ(純正が6, 4cが1)
4 無色ランプ
3 ジャンドフード
2 ラクドスサクリファイス
2 ゴブリン
2 アゾリウスオーラ
2 アゾリウスコントロール
1 ジェスカイコントロール
1 セレズニアミッドレンジ
1 赤単アグロ
SCG Tour Online Satellite #7 2020/11/22 参加者124名
6-0
1 アゾリウスコントロール
1 マルドゥ機体

5-1
4 スゥルタイ(純正が3, 4cが1)
3 ラクドスサクリファイス
2 ゴブリン
1 グルールアグロ
1 アゾリウスオーラ
1 セレズニアアグロ
1 ラクドスアルカニスト

4-2
7 ゴブリン
6 スゥルタイ(純正のみ)
2 ジャンドカンパニー
2 ジャンドフード
2 無色ランプ
2 マルドゥ機体
2 アゾリウスオーラ
1 オルゾフオーラ
1 赤単アグロ
SCG Tour Online Satellite #8 2020/11/22 参加者108名
6-0
ゴブリン
ラクドスサクリファイス

5-1
3 スゥルタイ(純正が1, 4cが2)
3 ラクドスサクリファイス
1 ゴブリン
1 アゾリウスオーラ
1 セレズニアアグロ
1 ラクドスアルカニスト

4-2
5 スゥルタイ(純正が4, 4cが1)
5 ゴブリン
1 白黒オーラ
1 ジャンドカンパニー
1 マルドゥ機体
1 青黒茶コントロール
1 緑単アグロ
1 ジェスカイコントロール
1 ネオストーム
1 グルールアグロ
1 ティムール霊気池
1 ラクドスサクリファイス
1 赤単アグロ
1 青単テンポ

当時、順に結果を追う中で以下のように考えていた。

Satellte #6
- 最多アーキタイプはスゥルタイ。全体の勝率は45%と低いが、母数が多くデッキパワーが高いため権利獲得者は多い。
- ゴブリンの上位入賞が多い。最多アーキタイプであるスゥルタイに相性が良いためと考えられる。

Satellite #7
- 最多アーキタイプは変わらずスゥルタイ。全体勝率は48%。
- #6に比べて6-0, 5-1の数は減ったが、相変わらずゴブリンの入賞数は多い。
- 5-1にラクドスサクリファイスが3名。ゴブリンに相性が良いため、ポジションが上がっている。

Satellite #8
- ラクドスサクリファイスの活躍が目立つ。使用者9名で全体勝率は76%。
- ゴブリンの入賞数は相変わらず多い。
- 5-1に4色ミッドレンジ(スゥルタイタッチヤシャーン)が2名。サクリファイス系のデッキの増加に伴ってヤシャーンをタッチする形が増えてきた。

上記の結果・流れから、本戦では以下のようになると予想した。
- 最多はスゥルタイ系のデッキ。結果に関わらず多くプレイされる傾向にある。
- サクリファイス系のデッキが増える。
- ゴブリンは減る

選択したデッキは4色ミッドレンジ。

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サクリファイス系のデッキに対してはヤシャーンの生贄禁止能力が有効。また、こちらの押し付けを意識したプランが求められると考えており、ヤシャーン→5マナ域の流れはそれに適していると考えた。
ミラーマッチへの備えとしてナーセット2+サメ台風3のラインはテンプレに沿っておいた。
《思考囲い》+《致命的な一押し》+《成長のらせん》+《自然の怒りのタイタン、ウーロ》+《世界を揺るがす者、ニッサ》の組み合わせはヒストリック環境でも随一のパワーを誇る組み合わせ。デッキの基盤が弱いということも無い。

R1, R2 Satellite 6-0による不戦勝
R3 オルゾフオーラ 〇
R4 4色ミッドレンジ ×
R5 ジェスカイコントロール 〇
R6 赤単アグロ 〇
R7 黒単ギフト ×
R8 スゥルタイ 〇
R9 スゥルタイ 〇

SE1 アゾリウスコントロール 〇
SE2 アゾリウスコントロール 〇
SE3 アゾリウスオーラ 〇
SE4 ラクドスサクリファイス 〇

決勝までサクリファイスとマッチングしなかったが、大事な試合でヤシャーンがその能力を遺憾なく発揮。優勝することが出来た。
スゥルタイ系が多い・ゴブリンが減ると考えながらメインボードに《絶滅の契機》ではなく《衰滅》を多めに採用している点など、反省すべきポイントはあったが、最高の結果で終えることが出来た。
トーナメントの結果から次はどうなるかを予想し、それに基づいた選択をすることが重要である。

▼ 直前のトーナメントで好成績を残したデッキに乗り換える

主に自分の練習内容から芳しい結果が得られなかったときや、練習する時間が取れなかったときに用いる手段。
土曜・日曜にそれぞれ大規模なトーナメントが開催されるとして、参加者の層やレベル感に大きな差がなければ日曜のトーナメントでメタゲームが大きく変わることは少ない。
前述したメタゲーム予想と合わせて、土曜のトーナメントで成功したデッキの中で日曜日のトーナメントも良いポジションを維持ししそうなデッキを選べば大きく失敗する可能性は低い。
自分が行ってきた準備に自信がないときや全く準備をしていないときはそのまま特攻して玉砕するよりは良い結果に繋がると思う。

また、参考にするトーナメントがPTに相当するものである場合、革新的なデッキが存在する場合もある。
昨年12月の日曜に開催されたPTQにChris Kavartek選手のゴルガリアドベンチャーを持ち込んだことがある。このデッキはPTQが開催された週の土曜に行われていたMythic Championship Ⅶ(以下MC7)の初日で全勝したものだった。
自分でも少しプレイしてデッキが強いことを確認したため、日曜のPTQにそのまま持ち込むことにした。幸運にも恵まれて優勝という結果が得られた。
ちなみに決勝の相手もMC7でセス・ブラネル・ハビエルの3名がトップ8入りを果たしたシミックフラッシュであった。
PTレベルのトーナメントで好成績を残すデッキはそれ以前のデッキとは比べ物にならない完成度なことがあり、自分の調整した結果を信じるよりも即乗り換えるほうが良い結果になることがある。
この時はジャンドサクリファイスを練習して土曜のPTQに臨んだが惨敗した。感触も全く良くなかったため、救いを求めてMC7初日の結果を参考にすることで良い結果に繋がった。

▼ 終わりに

デッキ選択というテーマにおいて、今時点の僕が文字に起こせるものは起こしたつもりですが、記事の内容が完全でないことも理解しています。デッキ相性の話なんかは上手く説明することが出来ませんでした。他の項目についても説明として十分かどうか分かりません。

今後も次の目標に向けて精進するとともに、いつかこの記事をアップデート出来れば良いなと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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