ルネサンスの幕開け
とあるところでこの絵についての問いかけがあり、なかなか面白いので考えてみる。
問:初期ルネサンスの画家ジョットの『ユダの接吻』という絵画について、ルネサンスの幕開けを物語る要素を3つ挙げよ。
とのこと。
真ん中にいるのがキリストで、向かい合っているのがユダ。
私が接吻をした相手をつかまえよ、との作戦でそれが実行されようとしている様子を描いているらしい。
宗教画も美術史もそこまで詳しくないけど、たぶんこうかな。
①遠近法
ルネサンスといえばこれだよね。
一応記事の内容は写真芸術をなぞっているのでこの話題を取り上げてみました。
線遠近法はルネサンス時代に確立されることは知ってましたが、なぜそれまで確立しなかったのかは知りません。ピンホールカメラの歴史は2000年以上あるというのに、発見できなかった、というより必要なかったと考えるほうが自然でしょうか。
じゃあ、遠近法で書いたから何?ってことだけど、建築家の設計手法、表現方法がまるで変ってしまったことは知られてます。パース効果を利用した建築物が増えていくのもルネサンス。建築家だけではなく、民衆の空間認識・リテラシーも変わっていったんじゃなかろうか。
②キスをモチーフにしている
ルネサンスといえばそれまで禁欲的な宗教画ばかりだったのに急に人間らしい画を描くようになった。それまでは厳格な宗教理念が民衆の価値観を作っていたと思うんだけど、ルネサンスの幕開けとはその価値観のパラダイムシフトでもあったんでしょう。
文化的にも科学技術的にもイスラム文化に劣っていた西洋社会がようやく力をつけてきた頃だよね。十字軍遠征もほぼ負けっぱなしだったから。経済力、軍事力、文化が飛躍的に発達していけば、そりゃ人々の価値観も変わるでしょう。
③ゴシック的要素の排除
3番目は正直悩みました。ですがルネサンスの幕開けですから、全時代からの大きな変革を指してます。つまり、ゴシックはオワコンって考え方。
この絵には建築が描かれてない。全部人、人、人。
あえて建物を描かずに"ゴシック的要素=イスラム文化"を避けたんじゃないだろうか。
結果的に新しい時代の幕開けにふさわしい自由な構図になっている。
社会が求めるニーズの変化というか、新しいものを求めるエネルギー?
以上3つの幕開け=パラダイムシフトをまとめると、空間認識の変化、価値観の変化、社会ニーズの変化、ということでどうでしょう。
線遠近法がモノづくり手法の変化を生み、人々の景色の感じ方も変えて、禁欲的な宗教倫理観から人間中心の価値観を持っていいんだと気づき始めて、国力もついてきて独自の西洋文化を花開かせる時代に入ることを示唆する画ですね。
正解はわかりません。
ふと思いましたが、仮にカメラでこのシーンを撮影したとすると、技術革新によって巨大化したゴシック様式の教会はきっとこの絵の中には収まらなくて、奥にかすかに背景として感じる程度だったのかなあと。そういう意味でも正確に描いてる。
以上です。
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