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コージ君、連絡下さい。

部屋から聴こえる雨音で目が覚めた。
枕元の眼鏡を探すも、見当たらず裸眼で外を眺める。弱視で見る陽当たりの悪い灰色の路肩は陰気な馬鹿が描いたフレスコ画みたいだ。
ようやく眼鏡を見つけ出し、ペットボトルの水を飲み、放屁。加納典明の頭皮を嗅ぐ機会があったらこんな感じの匂いだろうと思った。昨日はもつ焼を食ったので獣臭かったのだ。
きクぜ!

今日は休日で特に予定は無く、昨晩から昼酒の意思を決定的なものとしていた。
魚肉ソーセージを貪りながら、缶チューハイを空けスマートフォンを開くとメッセージが届いていた。先日入札した清春のポスターのオークション結果だろうと確認すると、香苗という名の見覚えの無い名前からの受信であった。

「お久しぶりです🐲
かなえっちだよ〜🌵覚えHELL⁉️
今、東京に住んでるって誠から聞いたよ❣️
現在、私は尾久に住んでいるので会おうなり🗡」

よくよく思い出して見れば俺の人生の中で存在した、香苗と云えば中学の頃の同級生で、巨大な腕時計を装着しており、授業中にその時計のアラームが止まず、発狂しその場で踏みつけ破壊した。その際にスウェットにManhattanと描かれていた事から「マンハッタン」と呼ばれていた80kgの女だった。
因みに誠というのは、野球部のチームメイトでファーストを守っていた。若くして糖尿病を患っており、昼になると木陰で腹にインシュリンの注射を自ら射つという個性的な選手であった。綾波レイをズリネタにした最初期の人間でもあったはずだ。
高校の頃はバイト先のコンビニでマルチ商法に誘われ相当額を騙されたと聞く。
何方も卒業後、全く面識も無く何故俺の所在をご存知か不明でありキモくて虫唾が走り悪寒がした。

どうせマルチの勧誘だろう。

即刻、メールを削除したが久しぶりに中学の頃を思い出し、ある友人のことを思い出した。

コージ君。

俺はコージ君に会いたくなっていた。

(続く)

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