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美術さんのいたずら

美術さんて、すごい。

初めてこの仕事に入った作品で思った。

あっという間に家を作る。

もちろんハリボテだけど、見た目はしっかり家。

ドアも開くし、(後ろもきちんと作り込む)冷蔵庫やらソファやらの他にそのドラマの家庭に見合った調度品が置かれる。デザイナーさんの腕の見せ所だ。

感心して見ていた私に声をかけた美術のおじさんがいた。

スタジオの主のようにそこにいた、小柄で丸っこいおじさんだった。

自分が手がけたセットのドラマを家で見るのが好きだと言う。

(そりゃそうだろうなあ)

と聞いていると、

「ちょっといたずらをするのが楽しい」

と言う。

何かと思えば、セットを微妙に動かすらしい。

誰にも気づかれない程度に、ちょこっといたずらをしかける。

「昔なんかな、居間のセットにあった招き猫の手を変えてみたのよ」

「え!!!」

「だあれも気づかないでオンエアされてた」

ガハハハハと嬉しそうに笑っていた。

それ以降そのおじさんとは会っていない。

今でもいたずらをしかけているのかしら?


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