【作品解説加筆】私家版 偏愛する小説のAI表紙シリーズ~江戸川乱歩『黒蜥蜴』
江戸川乱歩の中で何が一番好きか……。
あげればきりがないのですが、今回はAIで表紙を作ってみよう企画にしたので、表紙映えしそうなものを選びました。もちろん作品も大好きです。
美しい人には棘があるとはよく聞く言葉ですが、美しい人には蜥蜴のタトゥーがあるとうわけですね。緑川夫人は美しいのですが、なにせ世界中の美男美女を集めて生きたままホルマリン漬けにして、その美しい肉体を永遠のものにして自宅に人間剥製としてコレクションする(゚0゚)というとんでもない人なので、そら、腕に入れ墨くらいするでしょう。
この方の特徴は狂気なんですけど、見た目全然狂気(いっちゃってる人)じゃないってことなんだと思います。つまり、本人は自分は当たり前のことやってるだけだって思っているんです。
美しいものを永遠のものにして何が悪い、本人だってそれが一番幸せなんだって、信じて疑ってないところに最大の特徴があります。絶世の美女だっておばあちゃんになってしまうのだから、その前に殺してしまって若い頃の絶頂期をホルマリン漬けにして、人間剥製を作る方が本人のためだと信じて疑いません。
もちろん他人から見るとパッパラパーどころか、そういうふつうなところがかえってもっと危ないわけですが、完璧に美しいので(繰り返しますが邪悪なところがないので)、特に男性はうっかり「まあ、そういうのもありかな……」と思ってしまうのですね。
そんな男性いるのかって?いるんですよ。それがこの物語の中の明智小五郎ってわけです。だから明智小五郎もまた、犯人を追う立場ですが、美しいもの、犯罪美学に取り憑かれた人間ですから、言ってみれば緑川夫人と同類なんです。
そういう、勧善懲悪を完全に無視した乱歩らしい、美しけりゃなんでもありの耽美派の結晶がこの小説ですね。だから、探偵少年少女物語や推理小説を超えて、これは純文学でもあります。三島由紀夫が愛して自分で戯曲にしていますね。
三島はこの追う、追われるが逆転するようなドラマツルギーを見事にえぐり出しています。乱歩以上のできばえと言っていいでしょう。
イラストで個人的に特に表現したかったのは、一見すると人を見下しているような目(上から目線)をしているんだけど、見下してない。自分の世界を完全に持っていて、それを信じ切っているだけなので、人のことは眼中になくてこういう目になっているだけ。
この貴婦人は人を見下していない。見下すというかそれ以前に……自分以外の人そのもの(見下す対象の他人そのもの)が眼中に(世界に)存在しないのです。だから、嫌味じゃない。気品となっている。よくよく見れば女性らしい可愛らしさすらある。こんな感じを出したくて何枚も出力しました。
これもまた、みんなのフォトギャラリーに入れてみますので、ぜひ使ってみてくださいね!
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