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線型独立と線型従属

前回に引き続き,線型代数の話題を取り上げる.

線型独立の定義は簡単に書かれることが多いが,正確にはどういうものになるかを記述しておこう.ここでは,実ベクトル空間$${V}$$を考える.

まず,線型従属から思い出そう.$${v_{1}, v_{2}, \ldots, v_{k}}$$が線型従属であるとは,次を満たすことである.

$$
\exists c_{1}, \ldots, c_{k}\in \R \,\text{s.t.}\,[c_{1}v_{1}+\cdots+c_{k}v_{k}=0] \land [\exists i\in \{1, 2, \ldots, k\} \,\text{s.t.}\, c_{i}\neq 0]. 
$$

この条件の意味は,$${v_{1}, v_{2}, \ldots, v_{k}}$$のうち1つは他のベクトルの線型結合で表すことができるという意味になっており,実際$${c_{1}v_{1}+\cdots+c_{k}v_{k}=0}$$の内$${c_{i}v_{k}}$$を移項して,全体を$${-c_{i}}$$で割れば,その形になる.

さて,$${v_{1}, v_{2}, \ldots, v_{k}}$$が線型独立であるとは,線型従属ではないことである.すなわち,上の条件の否定を取ればよい.ここで,命題$${P\Longrightarrow Q}$$の否定は,$${P\land \lnot Q}$$であることを思い出そう.$${v_{1}, v_{2}, \ldots, v_{k}}$$が線型独立であるとは,以下を満たすことである.

$$
\forall c_{1}, \ldots, c_{k}\in \R , [[c_{1}v_{1}+\cdots+c_{k}v_{k}=0] \Longrightarrow [\forall i\in \{1, 2, \ldots, k\} ,c_{i}= 0]]. 
$$

これで,線型独立の条件を出すことができた.よく教科書などには,前半の「$${\forall c_{1}, \ldots, c_{k}\in \R ,}$$」の箇所が省かれて書かれることが多いが,正確に書き表せば,このようになる.命題の否定の練習にちょうど良い問題である.

これによれば,「線型独立であることを示せ」という問題の解答の書き出しは,「$${c_{1}, \ldots, c_{k}\in \R}$$を取り,$${c_{1}v_{1}+\cdots+c_{k}v_{k}=0}$$を仮定とする.…」となるはずだが,皆さんはこのあたりどうでしょうか.

この記事で少しでも論理のことを意識してもらえれば幸いである.


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