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『マタイ受難曲2021 –人は嘘をつく-』 視聴感想と、連想したマンガなどの話

2月21日、豊洲シビックホールで『マタイ受難曲2021 –人は嘘をつく-』という音楽イベントを拝聴しました。
『マタイ受難曲』バッハの有名な作品で、内容としてはイエスキリストが十字架にかけられる前後のお話を扱っています。楽器の演奏だけでなくドイツ語の歌唱も含まれているので、聴く側にとってもいろいろな要素を楽しめます。

今回のイベントでは、意図的にクラシック系ではないプレイヤーを集めて、初音ミクのボカロも入れるなどして再解釈しています。


また、キリストの使途ペトロが保身のために嘘をつくことに着目して、
“「人は嘘をつく」ことをテーマに、音楽的な美しさを加え、現代の日本で上演する意味を考えた”
とフライヤーに記載されていますので、原曲とは違うなんらかの取り組みがあるのだろうと、楽しみにしながら聴きに行きました。

と、言っても私はクラシックの知識ゼロです💦

今回は機会あって拝聴することになったので、会場でもしっかり楽しみたいと思い、事前にYoutubeなどでバッハ『マタイ受難曲』を何度も視聴しました。
原曲は怒涛の3時間オーバー … しかし、美しくて迫力ある! 意味わからなくても引き込まれる!

ちなみに以下の画像は日本語訳も入ってるので歌唱部分の意味も把握できます♬

私は聖書を読んだことは無いものの、少年時代からキリスト、ペトロ、ユダという名前にはある程度馴染んでいます。


その情報源はというと、実はSFマンガです。

マンガなので聖書とは明らかな違いもあるでしょうが、ペトロが保身のために嘘をつくシーンも、ユダが銀貨30枚でキリストを売る流れなどもマンガから頭に入れました。そんな背景もあって、『マタイ受難曲』は自分にとって馴染みやすいお題だったわけです。

とはいえ、今回はSFのことは頭から追い出して音楽を楽しもう、と思って会場に行ったら…

なんと『マタイ受難曲2021 –人は嘘をつく-』は、演奏や歌と別に、俳優さんの演技による近未来SFミステリーな雰囲気も持っていました!

Σ(・□・;)

びっくり!

『マタイ受難曲2021 –人は嘘をつく-』は配信もしてます。
この記事を書いている時点で残り数日なんですけど、2021年3月7日まで配信しているのでネタバレはしません。

会場では私のようなクラシック弱者でも2時間半ガッツリ楽しめました。
興味がある方はこちらからアクセスしてみてください 

音楽の壮大さをしっかり楽しみつつ、その一方で、

この内容なら、私の心に残っているマンガの話をしてもよかろうっ! と思い、ここからはマンガの紹介をします。

1・星野之宜の『妖女伝説』に登場するイエス ~イエスが説く愛で世界に悲劇が満ちていく~

私にとって最も印象深くイエスを描いたいマンガは、星野之宜『妖女伝説』という短編集に収録されている『砂漠の女王』です。この作品のイエスは、多くの人が知る通り愛や許しを説きますが、その教えこそが世界に憎しみや悲劇を生み続ける、という内容💦 

1979年の作品ですが、全然色褪せてません。

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電子書籍もあるので、歴史SFが好きな人はぜひ読んでみてください。

ハードSFマンガとしてかなり読みがいがあって、歴史の要素をぎゅうっとまとめた上に、キャラの魅力も濃厚な超おすすめ作品です。
『妖女伝説』は全2巻、短編集なので『砂漠の女王』を収録した2巻だけでも楽しめますが1巻も非常に良いです!

2・萩尾望都の『百億の昼と千億の夜』に登場するイエス ~ほかに類を見ない下っ端感が凄い💦~

萩尾望都『百億の昼と千億の夜』は、まあ、とにかく壮大です。数ページで100年単位で話が進んだら、「神」的な存在の前で人類は全く取るに足らない存在だと思い知らされます。

感情移入度は濃い作品ではありませんが、阿修羅王というキャラが超絶美しくて、それだけでも100回読めます。
ちなみにイエスは人類を死滅させる陣営にいますが、下っ端感が半端ないです。それなりに登場シーン多いんですが、こんな下っ端に描かれるイエスって他にないだろう、と思える扱いです。
 
ゆっきー舎による記憶イメージ図↓

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記事を書くにあたって検索したら、電子書籍化されていないばかりか、紙の本も絶版で、中古しか出回っていないという衝撃💦 こんなすごい作品なのに… ( ;∀;)

↑ 中古でエグイ値段ついてますね💦

歴史に残る名作なのになぜ再販されてないのか… 理由としては、イデオンは凄いと誰もが認めるけど、人気があるのはガンダム… と言えば理解しやすいと思います。
ほぼ同年代(1970年代後半)に書かれた竹宮恵子『地球へ…』も壮大なSFマンガですが、2度もアニメ化もされていることに比べて、本作の評価は余りにも低すぎます!
なにしろ『百億の昼と千億の夜』は壮大過ぎて親しみにくい部分もあるのでしょう。ファンとしては、良い意味で大量消費されない名作と納得する以外ありません。

3・道原かつみの『ノリ・メ・タンゲレ』 ~イエスは実は未来人、ペテロが超かっこいい♬~

本作はとにかくキャラの魅力が素晴らしいです。やはりSF作品なんですが、善悪の戦いという構図ではなく、科学実験的な視点と、懸命に生きる人間の価値感の対立が描かれます。
と、言うとコムズカシイ話っぽいですが、ペテロとユダの魅力と、二転三転する話の面白さで一気に読めます。
こちらも絶版で残念ながら中古しか販売されていません…( ;∀;)
さらに、中古も少量しか出回ってないです。みんなでワイワイ話題にしたら再販されないかなー。

↑ なかなかの値段ついてますが、50円とかで投げ売りされてないのは名作である証拠! そう思って心をなぐさめます。


ここから思い付きで夢みたいなことを言いますが、今回の『マタイ受難曲2021 –人は嘘をつく-』でも近未来SF要素を扱っていたので、『マタイ受難曲2022』がもしあったら、俳優さんの演技の原案を『ノリ・メ・タンゲレ』でやってくれないかなー…


「人は嘘をつく」という副題にも『ノリ・メ・タンゲレ』はかなりマッチするし、取り扱われることで再販されるきっかけになるかも!(ちなみに『ノリ・メ・タンゲレ』では嘘をつくのはイエスとペテロで、ユダは純粋なキャラでした)

『マタイ受難曲2021 –人は嘘をつく-』を企画されたshezoo(シズ)さんがこの記事を読むことはないかとは思いますが、もしよかったらご検討ください。

思い出深い『ノリ・メ・タンゲレ』 

ちなみに『ノリ・メ・タンゲレ』は1984年の作品です。
ものすごーく余談なのですが、私は90年代に漫画家を志望してた過去があります。いくつかのマンガ誌に投稿もしており、『ノリ・メ・タンゲレ』のようなSF性と人間ドラマがしっかり噛みあった作品を書きたい!と常々思っていました。
当時プロ漫画家のアシスタントもしていたので、あこがれの道原かつみ氏のところで働きたいと思い、道原氏が徳間書店『銀河英雄伝説』を連載していた時に問い合わせました。
その時は募集してないと言われて断念しましたが、今思えば、道原氏は繊細なタッチの作家さんなのに、私は線が太い少年漫画タイプだったので、絵柄が合わないとかで断られたのかもしれないですね。(自分の心の健康のために下手だったから断られたとは思わないことにしている…)

『マタイ受難曲2021 –人は嘘をつく-』の話に戻る

視聴後の感想としては、「演奏も歌も心地よく、すごいイベントに参加したなぁ」というのが一番です。

その一方、俳優さんの演技部分が音楽と少々ミスマッチな感じもしました。しかし、現代社会のモヤモヤを強く描く内容だったので、心地よさだけでなく、ざらつく感覚を残す意図した演出だったのかもしれません。

あるいは劇中で、いろいろな情報から訳が分からなくなって戸惑う「僕」の心境を味わうために、意図的に混乱させる内容だった可能性もあります。


イベントの意図としては普段クラシックを聞かない人が『マタイ受難曲』に興味が持てるように、という考えもあったそうです。
その意味では私は完璧なターゲットであり、思惑通りバッハに興味を持ち、今回のような再解釈も楽しいけど、一般的な演奏も直に聞いてみたいと思いました。
イベントの意図に完璧にハマってて、我ながら優良視聴者ですね。もう私のためのイベントだった!と考えておきます。

 ( ´艸`)

何しろ1年も続くコロナ禍、音楽イベントに行くのも久しぶりでしたから、生演奏には心も脳もしっかり揺さぶられました♬
また、政府のコロナ対応に不満を言いたい中で、劇部分がかなり社会風刺する内容だったこともあって、意味深な映画を見たような楽しみもありました。
いろんな意味で、豊洲まで足を運んだ甲斐がありました♫

残り数日ですが、興味がある人はぜひ配信でご視聴ください。



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