見出し画像

難易度高めのマルチタスク

駅からの道もまだおぼつかなくて、やや緊張しながら速足で向かう。目的地の建物が視界に入るとほっとしつつ、高揚感も伴ってさらに歩みを速める。

幟(のぼり)、垂れ幕、照明・・・スタジアムが近づくにつれて目にするいろいろなものが目新しくてかっこよくて。サッカー観戦を始めたばかりの頃のわくわくした気持ちをちょっと思い出す。

マッチデー。ホーム開幕戦。開門時間に合わせて到着した私の最初のミッションは、この日だけスタジアム内に掲出されるという選手ごとの写真パネル。入場して即、お目当ての選手を探す、探す、探す・・・

いた。いつもの優しい笑顔と彼らしいシンプルな直筆メッセージ。胸がいっぱいになる。テンションも当然上がる。写真を撮りまくり、そのテンションのまま近くにいた人に推しとのツーショット撮影も頼んじゃう(素の自分ならまず声かけられない)。撮ってくれた人、うれしさであわあわしながらお礼を言う私に若干引いていたようにも見えたけど、きっと気のせいだ。


うれしくてうれしくて。その場でパネルの写真を投稿しようとSNSを開き・・・すっと我に返る。そして、先ほどとは違う感情で胸がいっぱいになる。

私のタイムラインにあふれていたのは、自分が今いるところではない慣れ親しんだ場所。3年間通い詰めたそのスタジアムも、ホーム開幕戦を数時間後に控えて喜びと活気に満ちていた。


−−−−−−−−

いろんな選手のことが知れるし、世界が広がって楽しそう。でも一極集中タイプの自分にできるのかな。元々応援しているチームに加えて推し選手の移籍先チームの試合にも行く人たちを見て、そう思っていた。いざ自分がその立場になってみて、やはり難しさを感じる。

2024シーズンが始まり、新しいチームの試合にはすでに何度か足を運んだ。選手やサッカーの特徴なんかはまだよくわかっていないけど、応援とか演出とかあらゆるものが格調高くてかっこよくて、すでに好き!ってなってる。

今まで応援していたチームの試合も行った。過ごす時間は変わらず楽しいし、サポ仲間さんは温かいし、推し選手がいなくなってもやっぱり好きだなあと思う。

それでも「どちらのチームも応援します!」と言うのは難しい。なんか、「応援」ってなんだっけ?ってなってしまう。


ユニを着てスタジアムに足を運び声援を送ることを「応援」と呼ぶならすでにやってる。いやそれも素敵な「応援」だと思う。

ただ、私が大切にしたい「応援」とは、選手が目指すものを(気持ちだけだけど)一緒に目指すこと。

どちらのチームも目指すものは明らかに「残留」でも「◯位以内」でもなくて、ひとつしかないてっぺんの椅子のはず。私、それ、複数のチームと一緒に目指せる??

細かいことでいつまでもうじうじしているのはよくない。「好きな選手を追いかける/追いかけない」を決めたのだから、あとはもう新しい観戦ライフを楽しみ倒すのが正解でしょ。とも思う。それでも。


来月には直接対決が控えている。

心がふたつあればいいのに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?