【声劇フリー台本】壁の色

壁の色をひたすら塗り続ける一人用台本です。
某陣取りゲームの話ではありません。

ご利用の際は利用規則をご一読下さい。


【利用規則】


◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。

 商用・非商用問わずご利用いただけます。
 ご自由にお使いください。


 利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。


 音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名:影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
(@yukitora01)

 配信でのご利用も可能です。
 配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。

 また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。


 台本のアレンジは自由ですが、台本の意味合いが大きく変わるような改変(大幅にカットするなど)は不可とします。
 便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。


◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。


【台本】


 真っ白な壁に思い思いの色を塗っていた。

 自分が綺麗だと思った色。
 自分が好きだと思った色。
 塗って、塗って、塗りつぶして。

 壁はいつしか真っ白だったことが分からないくらいになった。


 綺麗だと思った色は移り変わる。
 好きだと思った色は移り変わる。
 綺麗だと思った色が汚く感じれば別の色で塗りつぶして。
 好きだと思った色が嫌いになれば別の色で塗りつぶして。

 そうして壁の色は常に変化していく。
 それでいいと思った。
 変わっていく色が楽しいと思った。


 でも、時折おかしなことが起こるんだ。
 綺麗な色で塗りつぶした筈なのに。
 好きな色で塗りつぶしている筈なのに。
 知らぬ間に、ジワリとどす黒い色が滲み出てくるんだ。

 どうしてこんな色があるんだろう?
 こんな色、塗った覚えも無いのに。
 不気味に思いながら、それを塗りつぶす。
 その時の綺麗な色、その時の好きな色で、どす黒い色を塗りつぶしていく。


 ほら、こうすれば大丈夫。
 あんな色、壁に無くていい。


……おかしい。
 何度も何度も色を塗っている筈なのに、どす黒い色がまた出てきた。
 塗りつぶしても塗りつぶしても、知らぬ間に別の場所に現れるんだ。

 一度だけ、気付かないふりをしてそれを放置してみたことがあった。
 もしかしたら、他の色とあわさって綺麗に見えるかもしれないと思ったんだと思う。


 でも、それは間違っていた。
 どす黒い色は見る見るうちに広がって、壁全体の色を変えようとしてきた。


 ダメだ。
 こんな色があっちゃダメだ。
 やっぱり早く塗り潰さないと。
 周りのみんなの壁を見てみてもこんな汚い色は見たことがない。

 こんな色が滲み出るのは自分だけだ。
 だったらちゃんと隠さないと。
 誰にも見られないようにしないと。


 壁にひたすら色をぶちまける。
 それが好きな色だったのか、綺麗な色だったのかは分からない。
 ただ塗り潰せれば良い。
 あのどす黒い色が見えなければそれで良い。

 ただその一心で色を塗る。
 もう、どうして壁に色を塗っているのかも分からない。
 こんなことをしなきゃいけないのなら、いっそのこと壁なんてぶち壊してしまえばいいのに。



 あ、こんなところに都合よく。
 そうだ、最初からこうしていればよかった。


 それじゃあ、これで。

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