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【読書】センスは知識からはじまる(水野学)

熊本県の公式キャラクター「くまモン」、有機野菜などの安全食材宅配「Oisix」、宇多田ヒカルさんのCDジャケット。

これらのブランディングデザインを手がけたのが、クリエイティブディレクターの水野学さんである。その水野学さん著・『センスは知識からはじまる』。

タイトルに含まれている「センス」という言葉。
本書では、次のように定義されている。

センスとは、数値化できない事象の良し悪しを
判断し最適化する能力のこと。

これからビジネスを興すにあたり、センスが必要となる場面が色々あると思う。

たとえば、

  • 会社のロゴを作る

  • 提供するサービスのコンセプトを考える

  • YouTubeで情報発信する際のサムネイルを選ぶ

といった場面。

こういった場面で、どのように考えればセンスの良いアウトプットができるのか。
そのアプローチ方法を本書から学んだ。

今後、センス良く仕事を行えるよう、本書からの学びを以下に記録しておく。

1.知識の集積で、センスの良いお店を作った話

現在、ショップやオフィスのインテリアデザインを手がけているという著者の水野さん。
そんな水野さんも、最初はインテリアデザインの素人だったわけだが、それでもセンスの良いショップデザインは作れたと言う。
具体的にどのようなアプローチで進めたのか、その手法を見ていく。

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①王道・定番から解いていく

第一にしたのは、和風洋風を問わず長く愛される老舗の内装をたくさん見て回ること。すなわち「ショップインテリアの王道・定番は何か」という知識を蓄えること。同時に、多くの人が通い、一定の基準が設けられているコンビニなども注意して歩いてみた。

②今、流行しているものを知る
第二にしたのは、流行のお店にたくさん足を運ぶこと。王道と流行の両方を知ることで知識の幅を一気に広げられる。
流行を知る手立てとして最も効率がいいのが「雑誌」。女性誌、男性誌、ライフスタイル誌、経済誌など、コンビニの棚に並ぶあらゆる雑誌を手にとってみた。

③「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみる
第三にしたのは、王道と流行以外にも色々なお店を注意して見ながら、「共通項は何だろう?」と考えてみた。そこから自分なりに見つけた「入りやすいお店(=繁盛するお店)」に共通するルールを挙げていった。

この時見つけたルールは、

  • 「床が暗い色」

  • 「入口が高すぎない」

  • 「雑貨店の場合は、他のお客さんとの距離が近くて少しごちゃごちゃしているくらいの方が来客が多い」

である。

④ルールを分析し、結論に結びつける

最後に、お店づくりの方向性を決めるため、③で挙げたルールを分析し結論を出す。

  • 「床が暗い色」については、「日本人は靴を脱ぐ文化があるので、真っ白やベージュなどあまりに綺麗な色の床だと、汚してしまうことに
    心理的なためらいを感じるのではないか」という分析をした。

  • 「雑貨店はごちゃごちゃしているほうが良い」というのも、雑貨の特性を知った上での分析である。雑貨店に来られるお客様の多くは、
    「かわいいお店だから入ってみよう」
    「プレゼントに何かいいものはないかな」
    といった漠然とした動機で訪れる。そういったお客様にとっては、ごちゃごちゃした中から面白いものを「見つけだす」のが楽しみである。
    それを味わえる空間づくりこそ、雑貨店に必要不可欠。

上記のような分析から、お店の内装や通路幅を決めていったそうだ。

また、著者が雑貨店を巡っている時、人一人が歩ける最低幅を下回っているお店もあったそうだが、個人経営の小さな雑貨店だったので、その窮屈さが逆に「小さな雑貨店らしさ」を醸し出しており、こういうやり方もあるんだ、と学んだという。
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著者はこのように、幅広い知識を集積し、その知識にもとづいて空間の床の色や商品棚の配置を決めているそうだ。この方法で多数のショップやオフィスのデザインを行い、「センスの良い空間づくり」に成功されている。

2.目指すは「ありそうでなかったもの」

著者は上記の話を例に、

"センスとは、知識の集積である"

と述べている。そしてさらに、

"イノベーションは、知識と知識の掛け合わせで  生まれる"

とも述べている。

例えばイノベーションの例としては、次のようなものが挙げられる。

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  • エンジンと電気モーターの力により、ガソリン代の軽減とエコを実現した「ハイブリッドカー」

  • 既存の照明器具で使えるのに、寿命ははるかに長い「LED電球」

  • メール、チャット、SNS、電話などが一体化した機能を備えながら、はるかに便利な「LINE」

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「ある程度知っている物の延長線上にありながら
    画期的に異なっているもの」

これが、イノベーションを生む際に必要となる考え方である。

独創性ばかりにこだわりすぎると、市場では全く求められないことがあるので注意すること!

使う人の気持ちを考えて、

新しいものに接する時、人は
過去のものや過去の知識と照らし合わせて考える
のが自然である

ということを頭に入れておきたい。

3.「ありそうでなかったもの」に「精度の高さ」が加われば最強

「ありそうでなかったもの」のアイデアが出せたら、今度はそこからどれだけ精度高く作り上げられるかでセンスは決まる、ということも覚えておきたい。

人の感覚はとても繊細で敏感なもの。
具体的にどこがどう違うのかは言えなくても、その製品が他とは何か違っていること、理由はわからないけれどもかっこいいこと、高い精度で丁寧に作られたものであることは鋭く感じ取るのである。

本書で紹介されていたのは、iPhone3Gの背面プラスティックのお話。

あのガラスのように平滑な美しいiPhoneの背面は、アップル社が精度の高さにこだわったからこそ生まれたそうだ。手間やコストをかけ、メーカーの常識では考えられない加工が施されているのである。

この精度の高さゆえ、iPhoneは世に広く受け入れられ、「iPhoneってなんかかっこいいよね」
「なんかセンスいいよね」という感覚につながっているのである。

まとめ

「センスを磨く。」

それは、知識を集積すること精度の高さを求めることで実現できる。

どこか抽象的で特別な人だけが持つ才能、というイメージがあった「センス」だが、私でも磨くことができる力だと知れたことは非常に心強い。

これからは良質な知識をインプットすることを心がけ、世の中に役立つものをアウトプットしながら、自分のセンスを磨いていきたい。

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