地域づくり系NPO職員の日常 2016年7月25日(月)~31日(日)【私たちの日常オムニバス】

これは新潟県長岡市にある地域づくり系のNPO法人に勤務する31歳男性のある一週間の日記です。

(文=唐澤頼充/NPO職員・ライター・編集者)

2016年7月25日(月)

週の初めは毎回その週にやらねばらないタスクをノートに書き出している。とは言え前週から持ち越しているものも多く、全然片付いていない案件の数々に焦ったりする。この日は内部での会議。業務の課題をざっくばらんに話し合えた。合間に「小規模多機能居宅介護施設」を立ち上げたい女性がやってきた。介護施設をベースに、子ども食堂や、障がい者の居場所・仕事づくりなどができる拠点を作りたいのだそうだ。以前にご紹介した新潟市の取り組みを見学しに行き、協力者を見つけたという。専門的な部分は私はわからにので、市の福祉総務課の担当者につなぎ打合せに同席した。福祉事業は大きな話だ。はたして夢は実現するだろうか?

2016年7月26日(火)

午前中に、市の担当と少し深い話をした。地域づくりは行政との協働が欠かせない。政策目標とNPO法人の行動目標が一致しなければいけないのだが、政策目標というものはなかなか決まって来ない。目指すべきゴールが共有できないまま日々の業務の意見交換が進む。やきもきしているのは行政の担当者も、私たちも一緒。大きな組織の課題というのは誰もが感じていることなのに、改善することはほとんど不可能に違いのはなぜなのか。不思議だ。

午後は休みを取り、長岡市から高速道路で約1時間の新潟市まで行き友人に会ってきた。私と同じで理屈っぽく、考え込んでは行動をなかなかできない男だ。彼は7つくらい年下なのだが、いつも深い話ができる。深すぎて他の人となかなか共有できない話だ。この日もまた「人間」について話しをした。彼とのような会話ができる人はなかなかいない。ありがたい人だ。

2016年7月27日(水)

長岡市和島にある中学校で毎年1年生が地域に残る伝統的な踊り「弓踊り」を総合学習で体験している。その取材に行ってきた。中学1年生5人に話を聞いてきた。この仕事をするようになってから中学生に取材させてもらう機会が増えたが、みんな準備していたであろう綺麗な発言をするので、なかなか素を引き出すのが難しい。けれど純粋で素直でいいなぁ。

地元の農家さんによると「農業体験させるんだけど、小学生、中学1年生頃までは”将来は農家になりたい”って言うんだ。けれど、高校進学を考え出す頃から農家になるって選択肢はほとんどなくなっちゃうんだ。世間のことをたくさん知り選択肢が増えると、やっぱりそうなっちゃうんだ」とのこと。

埼玉県の都会から長岡市和島のド田舎に転校してきたという男の子に「どっちが好き?」と聞いたら、即「和島!!」と答えた。2年後も同じように答えてくれるだろうか?答えてほしい。

2016年7月28日(木)

障がいのある子どもたちのお仕事体験プログラムを通して、地域に住む人たちが、互いのつながりを育み、温かな地域づくりを目指す「ぷれジョブ」という活動がある。受け入れ先の職場、子どもに付き添いをして一緒に作業してくれるボランティアの大人がいて成り立つ活動で、現場を見るだけで「あぁ、多くの人に支えられているんだなぁ」と感じられる。この日職業体験していた高校1年生の子は「週1回の活動が楽しみ」と言う。毎週いろんな大人に混じって何かをするというのは、一般の子であってもなかなかない機会だと思う。少なくとも私が子どもの頃は学校の先生と親と塾の先生と、同級生の親くらいしか大人と接する機会はなかったように記憶している。今思えばもったいない。ちゃんとしていない大人、適当な大人、理不尽な大人はたくさんいる。学校で教えられる「優等生な大人」なんてほとんどいない。そういう事が分かるには、子ども時代から親でも先生でもない赤の他人と言えるような大人とたくさん関わっていた方が良いよなぁ、と思った。

2016年7月29日(金)

レストランをしたいという女性と、ネット上で資金調達をするクラウドファンディングというサービスを運営している男性と、若者を支援している組織の男性との打合せに同席してきた。起業するというのはどこか身の丈を超えてリスクを背負ってやらねばならないこと。そうではなく、もっと副業的に気軽にお金を稼げることをやればいいのに、と個人事業主を3年で撤退した私はついつい思ってしまう。生活をかけたチャレンジはエキサイティングだがおなかが痛くもなる。

2016年7月30日(土)

妻と新潟市西蒲区にある「いわむろ屋」という観光拠点で企画展の準備を手伝う。「旧巻町」は20年前に原子力発電所建設に関わる住民投票が行われ、原発にNOを突き付けた地域だ。その住民投票までの道のりを整理した写真展が開かれる。今でも住民投票については地域の人も語りたがらない人が多い。そんな中、この展示を進めてきた方々の熱はすごい。少しでも力になれればと汗を流してきた。夕方に離脱し、長岡市で開かれたBBQへ参加。妻は夜まで展示準備の手伝いをしていた。

2016年7月31日(日)

昨日、準備を手伝った企画展が無事スタート。開会イベントが開催された。この日も妻とにぎやかしに行ってきた。妻によると「地元のおじいちゃんたちが、これを見てもらったら死んでもいいなんて言いながら準備をしていた」そう。それくらい想いをこめられるものがあるのがうらやましいし、尊敬する。来週にはシンポジウムもある。それもちゃんと手伝いに行こう。


唐澤 頼充
コミュニティとコンテンツとメディアづくりをする新潟・長岡のライター/編集者。NPO職員。「雪出版」代表。「にいがたレポ」編集長。小難しい話が好きな人種「コムズタリアン」。のうどう的な暮らしを楽しむ仲間を求めて活動中。

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