つづき、つづけること

宮崎で出会った鰻屋さんのことを。

先日、私は仕事で宮崎県の綾町を訪れました。

宮崎市内から車で40分ほどかかる綾町は、山に囲まれ、街並みのほとんどが田んぼという場所。
日本の田舎に行けばどこにでも出会いそうな街並みだけれど、ただ『のんびり』というのではなく、どこか張って懐かしさもあって、どこか憧れも抱いてしまうような軽やかさもあったのです。
簡単に言えば、ジブリの世界を現実に戻したような、そんな場所でした。


ここには今回の宮崎滞在の印象に残った中で、最終日のことを書いておこうと思います。

3日間の最後の日、私は1人で過ごすことに。

私は旅先でも仕事の合間でもちょっとでも美味しいものを食べたいと思っていて、食べ物屋さんを探す時に必ず利用するのがGoogle map。

そして今回の宮崎でもそのGoogleMapを頼りに見つけた鰻屋さん。
お店のホームページはないけれど、口コミサイトでとても評価の高いお店でした。
出張のご褒美は鰻だ!と、電話で予約し向かいました。


Google mapの精度は最近は相当なものだと思っていて、車にデフォルトで入っているカーナビよりよっぽど正確。
たまに細すぎる道を案内されることもあるけれど、ほぼ100%目的にたどり着ける。

けれど、この日はすぐには見つかりませんでした。
『案内を終了します』というアナウンスとともに見えたのは、川・橋・民家・道路だけだった。

畦道を走り、3回ほど同じ道を回ったのち、ようやく目星をつけられたのは予約の時間を15分も過ぎた頃でした。
よくみれば民家のそれとは異なり、よく手入れが施され立派で雰囲気のある玄関。車が何台も停められそうな空き地。
Map上のピンの周辺にはそこ以外に建物らしきものは見当たらない上に、車止めも何もないただの空き地に恐る恐る車を止め、店らしき一軒家に近づきようやく目に入ったのがA4サイズの小さな立て看板。

『予約のお客様を優先しております。』

よかった、ここはお店なんだ。
と、ようやく自信を持って引き戸に手をかけられたが、その小さな看板すら『仕方ないから出しとくか』くらいのものでした。(そしてここにも店名は書いていない…)


意を決して扉を開けた先には、木綿の暖簾に無垢材で出来た柱や梁が真っ先に目に入ります。
自然の枝を利用して、ランプが吊り下げられていたり、テーブルの端には特徴的な切込みが入っていたり。
決して派手ではないものの、静かで美しい佇まい。

出てきた鰻は言わずもがな。身の柔らかさと皮のパリッとした香ばしさに絶妙な甘さのタレ。フレッシュな緑の山椒と、上品に旨味だけが残された肝吸い。苦味を残した肝焼き。
最後には旬のたんかんの甘露煮と、今まで味わったことのないほどまろやかな、けれどもしっかりとした香りと旨味のあるコーヒー。
声が出るほどに美味しかった!

最初から最後まで本当に味わい深い時間でした。

聞けば、鮎の養殖をメインの事業にされながら、鰻の卸も行っており、その一環として鰻屋さんを営んでいるそう。
そうして10年間、看板も出さずに紹介だけでお客様が増えていったのだとか。

インターネット上には、いらっしゃった方の口コミしか情報がなく、実は一部情報が間違っているのだけれど、

『まぁ別にいいんです。』と。

なんというか、もう天晴れでした。

本業が別にあるにせよ、ここまでの質を提供するには手間で決してできないものだと思いました。
流行りすたりに流されず、いいと思うものをいいと思うやり方で、粛々と良い物を続けていた鰻屋さんの胆力を感じました。

何かと焦ってしまう私にはとても難しいことだけれど、
自分がいいと思えるものを自分たちのペースでじっくり細く長く続けていきたいと改めて思わせてくれた、そんな鰻屋さんでした。

もっともっと自分の内側を太くして、強くしなやかに行きていきたいものです。

*ネットにはアップして欲しくなさそうでしたので、お店の情報は割愛させていただきました。

気になる方はご連絡ください*


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