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ウェディングプランナーでいたいわけじゃない

こんにちは。フリーランスでウェディングプランナーをしているYUKINOです。自己紹介を兼ねて私の仕事に対する考えをまとめてみました。

長いけどよければお時間ください。

私の仕事はフリーランスのウェディングプランナーです。

簡単に説明すると、結婚式を新郎新婦と一緒に作る人です。

よくいるウェディングプランナーさんは結婚式場にいて、見学にやってきた新郎新婦を接客するところから始まりますが、私の場合は結婚式の場所探しから一緒に行って、本番の日までトータルでプロデュースします。詳しくはいつか書きますが、

結婚式場の方針とかに左右されず、私自身が良いと思えることを貫けるのでフリーランスになりました。

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結婚式がすごく好きというわけではない

わざわざフリーランスのプランナーになったのですから、結婚式が死ぬほど好きなんだろうと思われそうですが、実は結婚式そのものについてめちゃくちゃ好き!というわけではないです。

こんなこと言うと新郎新婦の夢が壊れるかなと思って、書くことを躊躇っていたのですが、誤解を生まないように丁寧に伝えられる文章を使って残しておこうと思っています。

結婚式は良いものです。でもその前に準備があります。

準備過程ではドレスや装飾や料理のことなどなど、様々なことを決めていきますが、同時に私は新郎新婦それぞれの考え方や価値観、得意なことや苦手なことも少しずつ理解を深めていきます。

私の願いとしては、新郎新婦同士もお互いへの理解を深め、より詳細な価値観を認め合っていって欲しいと思っています。そうした過程の先に行う結婚式であれば、自然といい時間になる。それはもう見たことのない夢のような結婚式になります。

嘘のない、幸せが現れるのです。

結婚式っていいなーって心から思います。けれど、結婚式の日だけが好きというよりも、それまでの準備の段階でお客さんの人生に向き合う時間が好きなんです。

なぜなら、そうして向き合った時間が結婚式本番を良くするから。そしてそういった時間が、1組のカップルを『夫婦にする』ことにつながると思うからです。

細かいことあまり考えずに結婚式が好き!と言ってしまえばいいのでしょうが、私の中ではこの違いはとっても大きくて、もしかしたら同じような部分でモヤモヤしている同業者やお客様もいらっしゃるんじゃないかと思って書き進めます。

結婚式って料理と似てる。

誤解の無いように書いておくと、結婚式自体がとっても好き!という人はこの業界に多いです。純粋に結婚式が好きと言える人が羨ましくもあります。

私もいつも結婚式の本番の日って大事だなと思います。結婚式本番がグダグダだったり、美しくなかったらやる意味がないと思うほど、結婚式本番の目に見える部分も大事にしたいと思っています。神は細部に宿りますから、美しくないと意味がない。

細部にまでこだわってこそ、結婚式の完成度は上がるし、その場にいるゲストも非日常を味わえて、心が躍るし居心地もよい空間になるでしょう。

ただ、一つ思うのは、目に見える部分だけに執着して、土台がしっかりしていないと、おそらく『豪華なだけ』『料理が美味しいだけ』『花嫁が美しかっただけ』の結婚式になってしまう可能性が高いということです。

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話を少しそらします。

私は料理が好きです。一見、料理なんてしなさそうに見えるみたいですが、家ではよく和食を作るんです。浅漬けとかも最高に好き。

和食を作っていると思うのですが、調味料って大体同じになります。砂糖・塩・酢・醤油・味噌。これにみりんや酒なんかも使ったりしますが、どの料理にも共通するものがあります。

それが、出汁。

出汁をきちんとひいて料理をすると、それだけですっごくおいしくなります。知ってました?私は最近発見しました。

普段は面倒だから出汁パックとか使っちゃうけど、本当は毎朝一番出汁とか引いちゃう毎日を過ごしたいなぁと思っていました。(そしたらコロナで急激に時間ができてそんな生活が叶いつつあります!わーい*)

で、話を結婚式に戻しますと、この『出汁』という存在が、結婚式で言うと新郎新婦そのものに当たるんじゃないかと思っています。

新郎新婦のふたりというのは、それまでお付き合いをして関係を築きあげてきたと思いますが、実際的には他人です。他人であるふたりが別々の方向を見ているのではなく、お互いを認め足並み揃っている状態だと、良い出汁として結婚式にすごくいい旨味をもたらします。

良い出汁が引けて、その出汁にいい調味料や具材(結婚式でいうと、ドレスや、装飾や、演出…)をうまく融合させられた時に、美味しい料理(=良い結婚式)が出来上がる。そんなイメージです。

出汁の引き方は人それぞれで、カップルが自ら考えて向き合って足並みが揃う場合もあるだろうし、担当してくれたウェディングプランナーさんや家族との話し合いによってお互いのことを認めていける場合もある。

ただ、もし、そういう話し合いをせずに進めてしまったら、出汁を入れ忘れたお味噌汁みたいに、味気ない結婚式になっちゃんじゃないかと思うんです。(ここで言う出汁は、少し前に流行ったコンセプトウェディングというような誰かから与えられたものではなく、ご自身の中にあるベースや価値観に基づいたもものです。似ているけどちょっと違うと私は思う。)

それで、私が理想としている結婚式(料理)のイメージは、料亭で最後に出てくるような、丁寧に作られた、出汁が良くきいた上品なお味噌汁。

出汁の良さが存分に引き立ちつつも、具材や味噌のおいしさをしっかりと味わえるような。そんなお味噌汁。

そういうお味噌汁を作るために私が果たしたい役割は、新郎新婦と向き合って話を聞くこと。それに尽きると思っています。

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正直、自分のことを言葉にして話すのが苦手な方もいます。それだけで良いです。それがわかれば満点です。

相手はもちろん、自分に対しても得意不得意なことって、案外わかっていなかったりするもんです。だから、少しでいいから自分と相手に向き合う時間を作って欲しいと思っています。何も口に出さず、考えいていることが伝わる夫婦は稀にいますが、それは稀。全員ができるものではないと思うんです。

毎日、毎回話し合いをしないといけない、というわけではなく、結婚式の準備期間だけでもお互いの価値観を一度さらけだして欲しい。

きっと、こんなことでもないとお互いの考え方なんて話し合う機会もないんじゃないかなと思うのです。夫婦って、さっきも書いたけど、結局は血の繋がりはない赤の他人同士です。だからこそ、相手を思いやることがすっごく大切になりますが、みんな菩薩じゃない。自分と相手は他人です。なんにもなしにぴったり合うことは絶対にない。だから、価値観のすり合わせを随時していく癖がつくといいなぁと思っています。(この話はまた今度書いてみたい)

そうした価値観のすり合わせによって、結婚式の土台である夫婦という関係性を育んで欲しいのです。そうして生まれた関係性が結婚式においてすごく大切で『良い出汁』になるんです。

料理(=結婚式)は出汁だけではできないですよね。ただの出し汁って美味しいけど、わざわざ人に出すものじゃない。だから、出汁に加える材料や調味料(=会場・料理・各スタッフ・ドレス・演出)をきちんと選び融合させていく。うまく融合させて、お招きするゲストのことを考えるのも私の仕事の一部です。

少なくとも、良い出汁が引ければ、どんな料理を作っても美味しいんですよね。
逆に出汁に雑味があったら、その後どんなに頑張っても大味な料理しかできない。

まぁ、気にしなければ料理そのものは完成します。強い濃い味に仕上げてしまえば出汁の味は多少ごまかせます。結婚式における材料(装飾やドレスやそのほか色々な演出)のインパクトって大きいから、そういう荒技もできちゃう。けどちょっとそういうのは私の好みではないなぁとおもいます。

だから、私の結婚式の理想は、美味しい美味しいお味噌汁、なんです。

とっても庶民的な例えで結婚式を夢見る方にはあんまり響かないかもしれないけど、感覚的にわかってもらえたら嬉しいです。

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私の色はあまりない

私は今まで仕事として、本当に様々な形の結婚式に携わることができました。ゲストハウスと呼ばれる専門式場での結婚式のプランナーからこの仕事をはじめて、軽井沢の自然の中で海外のような結婚式もプロデュースしてきました。

フリープランナーとしては、都内のレストランやホテルで行う時もあれば、お客様のご自宅(広い居間で挙式を行いました)だったり、北海道から宮崎までエリア問わずプロデュースをさせていただきました。この仕事についてから7年目を迎えますが、その年数の割にはだいぶ多種多様な結婚式に関わらせていただけたなと思います。

なんでここまでプロデュースしてきた結婚式の形が多種多様性になったのかというと、初めの話にもどり、私が結婚式自体をそこまで好きではないからだと思います。

私の中に理想の結婚式の形がない、という言い方が正しいかもしれません。

プランナーさんによっては、ホテルウェディングが圧倒的に多かったり、一つの会場でその会場の良さを知り尽くしてプロデュースをすることが得意な方もいます。世界観がばっちりあって、そこに惹かれるお客様もたくさんいると思います。そういった方向性もとても素晴らしいことで、色々とやってきたある種雑食みたいな私の方が優れているのだ、とは言いません。ただ、私自身に独特な世界観やカラーがない、ということは私の特徴の一つになっています。

そんな特徴にあえてしたのではなく、気づいたらそうなっていました。その理由が何度も書いている通り、結婚式自体を好きではないからなんだと思います。

私は、目の前のふたりのことを好きになる。そして、そのおふたりにとっての理想の形を探していくことが好きです。

だから、私の色があんまりない。最終的に形になり、目に見えるものを並べると、全部の結婚式が会場も見た目もバラバラです。

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そんなこんなで、結婚式が好きではない私は、いわゆるウェディングプランナーでいたいわけではない、と言うことに最近気がつきました。

最近のフリーのウェディングプランナーというと、その時のトレンドをしっかりと掴んでいたり、世界観があって、それを提案することに重きが置かれてしまっているように思うのです。

もちろん、私も美しいものが好きです。安っぽいものやハリボテのようなものはとても苦手。むしろ嫌いです。

本物であることや、人の想いの宿っているものが好きなのですが、その美しさには好みがあります。そして好みはお客様次第です。

私は、その好みの手前にある、生きてきた過程で育まれた価値観に触れたい。新郎新婦自身にも結婚式の準備を通じて、これから夫婦になる相手と向き合ってほしい。価値観をさらけだすことが苦手であれば、準備という過程を通じて理解を深めて欲しい。そういったプロセスのお手伝いがしたいと思っています。

私自身の好みもありますが、そういったところは私にとっては枝葉の部分。そういった花を咲かせる部分はチームを一緒に組むプロたちがしっかりと作り込んでくれるから、私は幹となって結婚式の揺るがない部分に根を張っていようと思うのです。

そうすることで結婚式そのものがよくなるというメリット以上に、結婚する二人の関係性を、強くしなやかなものにできるのではないかと思います。

入籍だけであれば、婚姻届を提出すれば完了します。でも、人間関係において、1組のカップルから『夫婦になる』というのはまた別の話。

そして、夫婦になったとしても、全てが順風満帆なわけがないんです。良い時もあれば、必ず嵐のような時もくる。

けれど、どうか船に水が入っても沈まずにいて欲しい。一緒に水を掻き出して、船を直して、雲間が現れ晴れるその時まで、耐えられるふたりでいてほしい。甘いことでは無いと思うけれど、そう願うばかりです。


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実は、この仕事を初めてから、私はずっと苦しかったです。

なぜだかこの仕事や業界が大嫌いになることがしばしばありました。

好きなのに嫌い…。この世界は嘘ばっかりだ…。でもお客様の感情は本物で、私の信じている結婚式に嘘は一つもない。でも、世間的に求められるのは少し違ったりする。複雑な感情でした。

でもやっと今、何故そんなに苦しかったのかわかりました。それは、世間的にイメージされるウェディングプランナーという仕事のゴールが、私の理想とする仕事のゴールとズレていたからです。私が信じている結婚式のゴールは、結婚式の日を素晴らしく迎えることではなく、その先にも続く夫婦という人間関係を育むお手伝いをすることなんだと思います。

だから今回、『私はウェディングプランナーでいたいわけじゃない』というタイトルから記事を書きました。

結婚式という儚い時間・空間に向き合うだけではなく、夫婦となる人間に向き合いたい。ご自身が好きなところも嫌いなところも含めて全部受け止めたい。なぜならあなたはあなたのままいればいいから。それだけでとっても素敵な存在だから。(これはYUKINOという屋号に込めた想いでもあります。これもまたいつか)

とにかく、結婚式には、良いところがたくさんあるけれど、『楽しくて幸せな時間』だけが本質的な価値ではないはずです。

私はこれからも、私の考える、結婚式の本質的な価値に対して忠実に仕事をしていきたい。

そう、心から思うのでした。

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( 写真は全て Wakana photo & craft 最高に幸せなShoko & Yu weddingより)

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