エンドロール

わたしは
なんで今
ここにいるんだろう





海沿いの
エアビーの
リビングで一人

メロディに
浸っていたら

突然
全部飽きてしまった

なにが正解なのか
ちがうのか

ニュースもSNSも
いろんな情報
全部、全部

はりぼてに見えて
どうでもよくなった

わたしは

演奏者のように
上手に楽器を
奏でることは
できないし

振る舞える
料理の才能もない



粘り気のある感情に
よりそうのは
たぶんもうできない

人混みに無防備に
はいっていくことも
できない

市役所の人が
わたしに話す説明は
ほとんど
頭に入ってこない

できないことが
多くなった

涅槃した者の
特有のむなしさと
いうべき
なのかな

この現実では
最弱すぎて
今にも消えてなくなりそう

わたしは


人のたましいを
掬い上げることしか
できない

それしか
できない
存在

そうやって
できないことに
フォーカスして
なげいていると

「すべてを
捨てて行く
覚悟は
できたか？」

と声がした

不意に
言われたから

わたしは
準備がまだ
すこし
できてないみたい

もう少しまって

あの顔や
あの場所を
思い出すと

涙が
でてきた

でも
たくさん泣くのは
がまんした

泣いてしまったら
すっきりして
軽やかに
消えてしまいそう
だから

もうすこしだけ
見守ろう
わたしを

まだ
あいかわらず

大きな柑橘を
剥くときだけは

全集中できるから