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私の夫はセラピ#4

東京旅行2日目。
私はメインの目的である推しに会いに行くためホテルを出る。
ホテルの滞在延長ができるかフロントに尋ねると、同じ部屋でもう一泊可能とのことだったため、そのまま泊まることにした。
飛行機もキャンセルして、明日の便で予約を取り直した。

だって、今日の夜もセラピの彼に会うから。

電車に揺られながら昨夜のことを思い出す。
初めて来た東京で、TwitterやHP上の情報以外何も知らない男性とホテルで会て、人生で初めての経験をした。

120分の特別な時間。それでも後ろめたさや後悔はなくて、むしろお金を払ってプロと名乗る男性としたことでどこかスッキリした自分がいた。

あの時お金を渡したときも、「もしよかったらご感想も書いてください」と業務的な会話をした時も、お客様とセラピストだからできたこと。

そんなことをぼーっと考えていたら、メールが届いた。
昨日のお礼、気を付けてイベントに行くようにとの気遣い、今夜仕事が終わり次第メールする旨が書いていたはず。
彼と会って何をするか、どんな会話をするか全くノープランだったけど、
それでもよかった。
この時は、東京に知り合いができた感覚だった。

イベントが終わったのは17時ごろ。
これから会場を離れる旨をメールで伝えると、某所に来るように言われた。
某駅について、近くの出口から外に出る。
建物も人もたくさんで、どこにいるかわからなかった。
とりあえず、近くにこういう店がある場所にいるとメールで伝えると、電話番号がかかれたメールが届いた。

電話越しから昨日聞いた声が聞こえた。
「〇〇です」と名乗った声は、少しだけ本業を引きずっているようなビジネス口調で私のいる場所を探してくれた。
私のところに走ってきた彼は、昨日と同じように上品なスーツを着こなしていて、ふわっと笑ってくれた。

「お疲れ様です。ここは初めて来たよね、迷わなかった?怖くなかった?」
知っている人に会った安心感と同時に、不思議な緊張が走る。
近くに止まっていたタクシーに乗り込むと、すぐに行先を告げた。

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