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THE BACK HORN/第五回夕焼け目撃者



 久しぶりの東京遠征。

 新幹線で向かう道中、車窓に映る景色にビルやマンションが増えてくると都会に来たなぁ心が少し浮き立つ。そのワクワク感が好きだ。なんなら遠征中のピークは既にそこなのかもしれない。
 そんなピークから真っ逆様、死んだような顔をしている帰りの新幹線の中で今この記事を書いているのだが、昨日の余韻と共に感想を綴っておきたい。

 やっと辿り着いた。


 THE BACK HORNのワンマン企画「夕焼け目撃者」にて、遂に憧れの聖地でもある日比谷野外大音楽堂に足を踏み入れることが叶った。

 多くのミュージシャンが特別なステージとして選び、いつも伝説が付きまとう野音。私の愛するバックホーンもワンマンライブを何度も行い、伝説的なライブを残している。
 そんな日比谷公園の中にある緑に囲まれ、独特な空気感を持つその野外ステージに、少なくとも私のような地方住みのロック好きは特別な憧れを持つのではないだろうか。

 うだるような殺人的暑さの中、日比谷駅を降り、会場を目指し歩く。汗だくになりながら公園内を歩いてどうにか会場へ到着。
 入場すると、お花が届いており、盟友でもあるNCISや風とロックの箭内道彦さん、スペシャ、私も愛用しているVIRGOwearworksからも届いていた。

 会場内に入ると、中央にコンクリート造りのステージがあり、扇形に広がるように席が配置され、自然に囲まれた歴史ある雰囲気がある。蜻蛉や蝉、揚羽蝶など虫達が飛び交い、それもまた野音ならではの趣なのだろう。



 17:30  開演

 青い照明が点灯し、お馴染みの荘厳なSEが鳴り響く。4人が手を振りながら入場し、会場からは大きな歓声が沸き起こった。

 身が引き締まるような、鳥肌が立つような感覚が一気に襲ってくる。何度見ても、この入場から1曲目がスタートする瞬間はゾクゾクして最高なのだ。

 そして始まった1曲目。真夏の野音に彼等が用意してきた1曲目は「甦る陽」。ロケーションにピッタリな初期の夏曲でスタート。身体を揺らしながら手を挙げ、演奏に応えるオーディエンス。野外フェスともまた違う都会の真ん中に佇む音楽堂の雰囲気と彼等のライブがまさに共鳴しており、この時点で来てよかったとしみじみ思った。最高の空間だ。

 さて、ここからはセトリになぞらえて全曲レビューしたいところだけど、長くなりそうなので中でもとりわけ印象に残った曲のみレビューしたい。というか、そもそもセトリをきちんと覚えていない。何故か良かったライブほどセトリ完全忘却案件なのである。不思議である。

8月の秘密
 やってくれないかな〜と密かに願っていた曲。イントロきた瞬間、変な声出た。これはもう歴年のファンの方々も大好きな曲だろう。ポツリポツリと不穏に歌い、サビで爆発するように絶唱する山田さんが初期の頃と何ら変わらぬエネルギーの塊で「す、すげぇ。」しか出てこなくなった。

深海魚
 これもダークホース的な意味で良かった曲。ラテン要素の入った情熱的なナンバー。個人的に再生回数の多い曲ではなかったけど、これまた海に沈みゆく夕陽を彷彿とさせる夏の曲で、手拍子なんかも入りライブ化けする曲だなと実感。

生命線
 少し夕空が暗くなり出したあたりで、鳴らされる暗めのイントロ。どん底で苦しかった頃に何度も私の心を奮い立たせた曲。少しずつ熱を帯びていく曲調に合わせ4人の動きも激しくなっていき、ラスサビでボルテージは最高潮へ。血が沸き立つような感覚と共に、この日一番涙腺に来た瞬間でもあった。

修羅場
 歌詞の内容的にちょっとした物議を醸した曲。しかしライブパフォーマンスは圧巻。渦巻くようなカオスな重低音で岡峰氏のベースが主張してくる。入り乱れるような照明も曲の世界観を表現しており流石としか言いようがない。今回のセトリのがんじがらめ→修羅場→墓石フィーバーの変態カオスゾーンはワンマンならではのディープな流れで大歓喜。

夢の花
 正直、今回の野音でいっっっっっっちばん聴きたかった曲。いつだったか、この曲の野音でのライブ映像を見て、4人の演奏から漂う美しさと透明感に惹かれ「野音に行ってみたい」と思うようになった。
 ライブだと山田さんもギターを持ち、強めのベースやドラムと混じり合い、厚めの音に進化していてとても心地良かった。

真夜中のライオン
 いやマジか、これやるの!?驚きで狂ってしまった。アナザーサイドエクスプレスツアーもしくはいつかのマニヘブ振りに聴いたかも。ストロボ照明に始まり、栄純さんの劈くようなギターに合わせる手拍子が気持ちいい。そしてシンフォニアやブラックホールバースデイなどのキラーチューンに混ざっても存在感は劣らず、ここら辺にバックホーンの曲の層の厚さを感じる。野生的で荒々しいパフォーマンスで胸が熱くなった。

太陽の花
 今となってはフェスでも定番のレギュラー曲。アジアの国を思わせる不思議で懐かしいようなメロディが癖になる。ラスサビ前の「何度でもこの手伸ばすから」の山田さんの力強い声と差し伸べる手の動きが毎回好き過ぎる。夕日が沈み暗くなっても、燃えるように激しく照らされるステージが眩しかった。

ヘッドフォンチルドレン
 期待高まるアンコールで鳴らされたのはピアニカのパートも入るレゲエ調の名曲。行き場のない感情を吐露し、心の隙間に入り込むような歌詞も本当に素晴らしい。オーディエンスに歌わせるパートで一体感が生まれ、熱くなるというよりは少しホッと胸を撫で下ろすような感覚がいいなと思う。


 まぁ、そりゃね、全曲良かったんだけど敢えてピックアップするならばこのラインナップかなと。定番からレア枠まで、いやーホントに全曲素晴らしかった。


 いつもより山田さんがオーディエンスにマイクを向け歌わせるシーンが多くあった印象。数年前に声帯結節でツアーを中止したこともあり、どれだけ自身と向き合い、どれだけ葛藤してきたか想像を絶するけれど、それでも歌い切ろうとする彼の姿勢には本当にリスペクトしかない。だからこそ、こうして我々ファンに歌を託そうとする姿が本当に嬉しかったし、それに全力で応えようとするファンの皆さんの姿にも熱いものを感じた。
 いつも思うけれど、どんなライブでも全身全霊を尽くす山田さんの歌がなければ、這いつくばってここまで生きてこれなかった。

 MCで松田さんも言ったように(いつも通りの噛み噛みで微笑ましかった)今日しかないセットリストといった並びで、今年の夏はもうこれで何も思い残すことはない。
 あと、直接マニアックヘブンの告知もあり、年明け3公演が予定。仙台Rensaダメ元で申し込もうかな。

これ程ファンの気持ちを理解したイベントなかなかないよね。


 想像した何倍もバックホーンは野音が似合っていた。最初入場した時「思ったよりは狭いかも」なんて思ったりしたが、ライブが終わってみたらなんだかバカデカい会場にすら思えた。
 土砂降りだろうが、灼熱地獄だろうがまた来たい場所が出来て嬉しい。今の野音は将来的に改修されるようだけど、新しくなってもまた夕焼け目撃者を開催して欲しいと願う。
 夏の思い出をありがとうバックホーン。

 それでは、山田さんがいつもアンコールの時に叫ぶ、あの約束を果たすその日まで、


 「また生きて会おうぜ」

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