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浜辺のスクリプト

砂浜に開いている小さな穴を、わたしは見つめています。


優しく波が打ち寄せる心地よい海辺。

ときおり勢いよい強めの波が来たときに、避けきれず服が濡れてしまうけれど、それすらなんだかおもしろくて、わたしはすごく安心するのです。


裸足の足にまとわりつく濡れた砂と、少し暖かい海の水と、頬に当たる風がちょっぴりだけ涼しく感じ始めたとき。


わたしを呼ぶ優しい声が聞こえる。

わたしはまだ遊んでいたかったけど、その声がうれしくて、大きく優しいひとの元に駆け寄ります。


まだ、遊んでいたい!


そう伝えたかったわたしに、その人はにっこり笑いかける。


一緒に見に行こう。


わたしはその人が言ってることがわかりました。


砂浜に住む貝、波打ち際を泳ぐ小さな魚たち、足元を流れる波の中に住む無数の目に見えない生き物たち。


小さくなんの知識もない、そんなわたしが一瞬だけど開かれた世界を感じることができたのはどうしてだったのでしょう。


わたしは足に付いた砂を払い、サンダルを履いて、帰り道につく。


優しく大きな人が運転する車の中で、暖かくふかふかのタオルに包まれ、

ただ安心して、眠るわたしをたくさんの生命が見守ってくれている。


とそんなふうに感じながら、心地よい車の振動にうとうととまどろみ、一番小さなものが、一番大きな世界を創るのかもしれない。と、柔らかく感じるのでした。

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