恐れのスクリプト
「どうしてそんなに怖がってるの?」
そんなふうに、小さいひとは真っ黒な黒曜石のような瞳で。
わたしの目をまっすぐに覗きこみながら、不思議そうに首をかしげています。
まるで小鳥のような心地よい声を聴きながら、その小さいひとが、わたしの頬にそっと置いた手の柔らかく暖かい感触を感じます。
わたしは、なぜかわからないけど泣きそうになり。
「わからないけど、とっても怖い」
と絞り出すように声を出す。
「生きるのも、死ぬことも怖い。わたしの深く深く暗い恐れや孤独。誰も絶対にわからない。。」
小さいひとはただにっこりとほほえみ、小さな腕でわたしの身体を抱きしめます。
小さな存在は、計り知れないほどとても大きな光になり、わたしを包みこむ。
驚く間もなく、わたしはその光と一体になり、気づくととても高い高い位置、地球を、宇宙を上から見渡すような、そんな場所にいて、言い表すことができないくらいの美しさを見ている。
「あなたが守ってきたものが見える?」
「そして、あなたを守ってきたものもそこにある」
その意味がわかるかわからないかの瞬間に、わたしはいつものわたしの部屋にいて。
見慣れた部屋の天井を見つめている。
わたしの耳にはエアコンの音が聞こえ、頬に流れる涙の暖かい感触を感じます。
かたわらにいる、猫のいとおしい寝顔を見ていると、かわいらしい寝息が聞こえる。
そっと撫でるとふわふわの柔らかく暖かい感触。
わたしは全身から力が抜けるのを感じます。
ここに確かに存在していると感じるものと、
存在を証明できないけど
ありありと感じるものと
違いはないのに、わたしは自分が辛いほうにフォーカスをしていた。それはわたしのせいではなく、ただの状況。
自分を責めるものから解放されたときに、ただのわたしと、ただの世界が一体になるような静かな喜びが、柔らかい毛皮から伝わってくるのでした。
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