蛍のスクリプト

「わあ、、」
蛍が舞っているその光のひとつひとつを、小さい女の子はきらきらとした瞳で眺めています。

あたりには、ときおり草を踏みしめるささやかなキシキシ、、という音が聞こえます。

草を踏みしめる感触を、
かわいい靴の裏に感じることができる。

思わず息を止めて見いってしまっていたので、あわてて呼吸を戻します。

わたしの中の驚きと喜びが、吐き出され、あたりのその時期特有の湿った空気。はかなげで美しい蛍たちの呼吸。

それを気づかぬうちに吸い込んでいる。

優しい大きなひとは、その少し骨ばっているけどあたたかい手で、わたしを守るようにそばにいてくれています。

わたしが蛍を驚きと喜びに満ちて眺めているように、その大きなひとはわたしを眺め、そして一緒にまるで夢のような幻想的な光の点滅を眺める。

ふと、上を見上げると
美しい満天の星。

なぜか少し怖くなり、その優しい大きなひとにしがみつきます。

するとそのひとは少し微笑み、そっとわたしを守るように肩に手を置いてくれます。

わたしは恐ろしいほど美しい
満天の星空や、迷いこんでしまった異次元のような幻想的な蛍たちの景色を見ている。

それなのに、きちんとわたしの肩に触れるその大きく優しい手の、間違いない、いまそこにいる暖かさを感じることができ、すごく安心できるのです。

そうしていたら、わたしの肩に蛍が一匹とまり、そのあと、そのひとにもとまりました。

なぜだか、蛍も、星空も、そのひとも、わたしも。全部同じなんだって感じて、わたしはただ夜の空気を吸い込み、わたしの美しい熱を吐き出すのでした。

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