リアちゃんのスクリプト

リアちゃんはとってもおびえていました。


だって。ただ自分がおもしろい!楽しい!うれしい!って感じたことを表しただけで、周りがみんなとても怖い顔で見るのです。


彼女が、いやだなあ、おもしろくない、嫌いだなあ、、って感じたことそのまま表したら、周りはいっそうきつく彼女を責めたてるのです。


そう、まるで、リアちゃんが何かを感じることが、それだけでこの世界にとっての害悪であり、彼女の表現は罪深い愚かなものとして、みんなは彼女を押さえつけようとしてくる。


誰より小さな柔らかい女の子はそんなふうに感じてしまいました。


とても賢くて優しいリアちゃんは、もうすごく怖くてかなしくて、苦しくて。息すらちゃんとできない。


わたしはいったいどうしたらいいんだろう、と途方にくれます。


わたしがかわいくないから?わたしが頭が悪いから?わたしのどこが悪いのかな。わたしがここにいたらいけないのかな、、


他の子たちを観察します。

彼女たちは本当の自分に気がついていないまま、声が大きく、誰より自分が偉いと思ってるような

人たちに受け入れられやすい自分を演じている。


リアはそんなふうに見えてしまう自分が嫌になります。


そうです。もしかしたらみんなは本当の自分に気がついていたのかもしれません。


気がついていたけれど、今生きているこの世界に、自分の本当を表すのは得策ではないと、考えていたのかどうかは、誰にもわからないことでしょう。


ただなにも考えず愛されている女の子だっていたはずです。その子が微笑めば周りもつられて微笑み、その子が悲しみにくれていたら、一緒になって悲しみ慰めてくれ、その子が怒れば、怒りをきちんと受け止め認め謝ってくれる。


そうじゃないわたしは、、とリアちゃんは自分のダメさ、愚かさに絶望します。


死にたい気持ちになったけど、うまく死ぬこともできなかったリアちゃんは仕方なく、本当の自分ではないもの、大きく抗うことのできない世界(と呼ばれているもの)の価値観に従うことにしました。


それでもいっぱいはみ出して、いっぱい悲しいツラい思いもして、でも

なんとか幸せな現実かもしれないというものを作ることができました。


なのに、リアちゃんの心は全然満たされないのです。愛されていても、それを疑い、自分が持っているものなんて、すごくちっぽけだと思ってしまう。


リアちゃんはどこの誰より満たされ幸せでないと満たされない。


誰からもうらやましがられる完全無欠な幸せでなければ認められないのです。


実際にそんなものはあるのでしょうか?

リアちゃんにもわかりません。


ただ、苦しく、それが欲しいのです。


だって、わたしは、すごく苦しんできたけど、本当は誰からもあがめられ、ちやほやされる存在なはず。なんて世界は歪んで間違っているんだ。


その他大勢を演じてうまくやってたような子達、うまくやれないわたしをバカにしてたような子達からもうらやましがられるような存在、それがわたしの本来の姿。

わたしは、そうならなければいけないのだ!


疲れはてたリアは、草原の深い穴を見つめています。柔らかい日差しがリアの髪の毛を暖め、風が優しく頬を撫でる。


リアの肩にいとおしい力が触れると同時に、悪夢のような暗い深淵からの囁き。


いま、ここにいるお前はいったい誰なのだ?


リアは叫びます。


わたしは誰でもない。

お前の言うなりにはならない。


ただ。わたしは創る。

それだけだ。


ふわっと身体が軽くなり、草原に横たわる自分の肉体を感じる。


カサカサ音を立てる小さなてんとう虫や、ふわっと柔らかい風を起こす美しい蝶々の、ささやかなのに圧倒的な存在感を感じ、なんだか震えるよう。


リアちゃんは起き上がり空を見上げ、ずっと欲しかったものが、ずっとここにあったのかもしれないな、とちょっとだけ感じるのでした。

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