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緑の女神のスクリプト

わたしが書いてみたくてあなたにスクリプトを書かせて、とお願いしました。

あなたは快諾してくれて、いろんなことを教えてくれました。

駅からお家までは歩くこともあるし、原付移動のときもあるし、雨ならバスに乗ったりもするんですよね。

雨の日にバスに乗った時の車内にこもる湿った空気、窓ガラスに映る雨粒とそれを透かしてぼんやりとした外の景色が見える。

ときおり運転手さんのアナウンスが聞こえる。

そして座席のシートから伝わる振動と温もりを感じて、少し眠くなってきます。

まだ、小さかった頃カッパを着せられ、母と手を繋いでバス停でバスを待っていた。

目の前を走る車が遠慮なくあげる水しぶき。

まるでわたしたちのことが見えていないのかのようで、そんなふうにスピードをあげて走り去る車が怖くて仕方なかった。

びくっとして母の手をぎゅっと握ると、優しくこちらを見て大丈夫よ、と微笑んでくれる。

わたしは安心して、でもなんだかもじもじとうつむいてしまう。

小さいわたしには高すぎるバスのステップも、母が優しく見守ってくれて

とても安心するのに、なぜか、もっと急がなきゃ、ちゃんとしなきゃとそんなふうに感じてしまいます。

そう、いつからでしょうか。あの暖かい眼差しがまるで消えてしまったかのように感じられ、世界がとても冷たく見えてしまった。

わたしが、自分ひとりでがんばらなきゃ、って自分には高すぎるステップを超えるために力を貸してくれたあの手は、もうないんだな。

とそんなふうに思ってしまった。

ほんとうはいつでもそこにある暖かさを、感じることができたかもしれないのに。

ベランダにあるハーブたたちの、イキイキとした緑と、軽やかなのに、深いところに染み込むような香りを胸いっぱいに吸い込んでみます。

彼らは何も言わないけれど、ただそこにあって、こんなわたしに優しいまなざしや、感謝すら伝えてくれる。

しなやかな強さを、わたしは彼らから学んでいる。

そして、雨の日の独特な匂い、緑と土から醸し出された原始的な力強さ、気高さが、実はわたしの中にもあったのかもしれないと、そんなことを考えて雨の音を聞いています。

彼らのひそやかな声、優しく愛されている感覚を感じたくなり雨の匂いを嗅いでいると、不思議なほど深くあの雨の日の感覚、小さな女の子のかわいい笑顔がわたしの中に浮かんでくるのでした。

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