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セルビア音楽祭に伺って

去る3月15日、「上阪徹のブックライター塾」の先輩で、
ピアニストの福田里香さん(WPTA〈国際ピアノ指導者連盟〉日本支部代表)が主催をされた
セルビア音楽祭にお招きいただきました。

(c)So Okamoto

会場となったのは、品川の御殿山にあるセルビア共和国大使館。
2020年閉館が決まっている原美術館の並びにあります。

(c)So Okamoto

大使館の建物は2019年4月末で売却されるとのことで、5月以降は別の場所に移転するそう。
現大使館で音楽祭を開催したのは、最初で最後だとのこと。

(c)So Okamoto

ストイコビッチのファンで、以前スポーツ媒体に勤めていらした、
セルビア大使館の日本語通訳の方にお聞きしました(笑)。


音楽祭ではセルビアの著名な作曲家である
アレクサンダル・ヴィッチ、イシドル・バイッチらの楽曲や
セルビア愛唱歌、セルビア舞曲など、全19曲を披露。
ネナド・クリシッチセルビア共和国大使もいらっしゃいました。

セルビア共和国大使・ネナドグリシッチ大使よりご祝辞の場面。隣は日本語通訳の小柳津さん (c)So Okamoto


主催の福田さんはおそらく2〜3曲、
しかも小品を演奏されるのだろうと思っていたら、
実に16曲、ほとんど出ずっぱりで弾かれていました。

福田里香さん(c)So Okamoto


ソロとしての演奏だけでなく、
角崎悦子さん(セルビア日本音楽交流推進の会代表、2019年セルビア共和国政府より叙勲も)のバイオリン共演、
新国立劇場合唱団所属でソプラノ歌手の塚村紫さんとの共演、
モスクワ音楽院を出られた早川枝里子さんとのピアノ連弾、
さらに運営面では
主催としてのアーティスト手配、大使館との調整から
セルビアゆかりの作曲家の親族より楽譜を調達するところまで
八面六臂の活躍でした。
当日を迎えるまで、さぞ大変だったと思います。


〈コンサート演奏曲目〉

1)セルビアの子供の歌メドレー バイオリン:角崎悦子、ピアノ:福田里香
  「アフリカに行った(そしてパプリカを植えた)」「子供は世界の宝」
2)バルカンの3つの歌メドレー バイオリン:角崎悦子、ピアノ:福田里香
  「マケドニア悲歌」「山の麓を少女が歩いていた」「愛しい乙女シャーナ」
3)ピアノの為の6つの小品
  No.1 ピアノ:福田里香
  No.2 ピアノ:「セルビア音楽祭」オーディション奨励賞入賞者2名
4)セルビアの歌メドレー バイオリン:角崎悦子、ピアノ:福田里香
  「春の祭典」「いいもの買ってあげるね、ダンチェ」
5)〈セルビア愛唱歌と踊りの曲〉もっと早く出会っていれば-コロ 
バイオリン:角崎悦子、ピアノ:福田里香
6)アレクサンダル・ヴイッチ ピアノの為の3つの小品より No.1 
ピアノソロ:早川枝里子
7)フランツ・リスト「愛の夢 第3番」
  (編曲:福田里香) ソプラノ:塚村紫 ピアノ:福田里香
8)イシドル・バイッチ「夢」 ピアノソロ:福田里香
9)セルビア舞曲 ピアノソロ:福田里香
10)ヨハン・シュトラウス「美しき蒼きドナウ」ピアノ連弾 
第1ピアノ::早川枝里子、第2ピアノ:福田里香
11)〈セルビア悲恋歌〉ああ、私の心は何故こんなに痛むのか 
バイオリン:角崎悦子、ピアノ:福田里香
12)セルビア舞曲 ピアノソロ:福田里香
13)セルビアの愛唱歌「タモ・グレコ」 
バイオリン:角崎悦子、ピアノ:福田里香

スラブ系の楽曲の特徴なのかもしれませんが、
メジャーコードの明るい展開に行きそうになると、
マイナーコードの強い力で引き戻される曲
が多いように感じました。
イシドル・バイッチ「夢」などは、
その典型かと思います。


またセルビア愛唱歌と踊りの
「もっと早く出会っていれば-コロ」は
アジアの旋律が非常に多く、
昭和40年代の歌謡曲、
とりわけなかにし礼が作詞をするような
メッセージ性の強い歌謡曲を模した
メロディラインが乗っており、
スラブのナンバーには思えない
ところがありました。

(日本語通訳の小柳津さんにその感想を伝えたところ、
セルビアの曲は日本の歌謡曲や
演歌のフレーズに似たナンバーが多いとのこと。
セルビアのテレビに
おじいちゃんが沢山出てくる音楽番組があるそうで、
番組で歌われる曲が日本の演歌にあまりに似ていてギョッとしたそうです)

セルビア音楽の解説をする角崎悦子さん(セルビア日本音楽交流推進の会代表)と福田さん (c)So Okamoto


セルビア舞曲は、
左手のピアノの伴奏が非常に力強く、
ドナウ川の雄大さを感じさせます。

またアレクサンダル・ヴィッチの曲は絵に例えると
幾何学模様のグラフィックアートのような印象の現代音楽

左手の旋律と右手の旋律が
呼応するような譜割りがされておらず、
放っておくと右と左の音楽が分断される内容で、
解釈やストーリーの作り方が
奏者に大いに委ねられる難しい曲
でした。


「美しき蒼きドナウ」では、早川枝里子さんと福田さんが連弾を披露しました。
この曲はヨハン・シュトラウスがセルビアに来た際に
ドナウ川の壮大な流れを見て作曲したもの。
狭い鍵盤を互いに一部譲り合いながら(笑)、
早川さん、福田さんが楽しそうに息ピッタリで弾いていたのが印象的でした。

早川枝里子さん、福田さんの「美しき蒼きドナウ」連弾の様子 (c)So Okamoto


そしてフィギュアスケートで
浅田真央さんが2010〜2012年にフリースケーティングで使った曲としてお馴染みの
隣国ハンガリーの作曲家、フランツ・リスト「愛の夢 第3番」
は、
原曲通りソプラノの歌付きで披露されました。
有名ピアニストがコンサートのアンコールで
披露される頻度の高い曲でもあります。

ソプラノ・塚村紫さん(新国立劇場合唱団所属)によるフランツ・リスト作曲「愛の夢 第3番」の歌唱 (c)So Okamoto

「愛の夢 第3番」の重要な旋律を時に強いタッチで弾くことで
曲を立体的に浮かび上がらせようとする奏者が多い中で、
福田さんはソプラノの歌が乗るからというのもありますが、
優しくなだらかに弾いていらしたのが印象的でした。

フランツ・リスト「愛の夢 第3番」の歌唱をする塚村紫さん (c)So Okamoto


コンサートの後は、
セルビアのお菓子、ソフトドリンクを楽しみながらの懇親会が行われました。

(c)So Okamoto

青木ゆり子シェフが作られた、クグロフ(斜めにうねりのある帽子のようなアーモンド風味のお菓子。ブリオッシュ生地。
オーストリア、スイス、ドイツ、フランスのアルザス地方、セルビアなどで食べられる)など
セルビアのお菓子が振る舞われました。
クグロフは桜の花が入った日本の四季バージョンで焼かれたとのこと。

手前のお菓子がクグロフ、左奥がサワーチェリーのケーキ、右奥がカナッペ

〈メニュー〉
Proja / Corn Bread セルビアのコーンブレッド
Kolač sa Višnjama / サワーチェリーのケーキ
Vanilice / Vanilla Cookie ヴァニリツェ (ジャムサンドクッキー)
Orasnice / メレンゲと胡桃の焼き菓子  
 

セルビアのお菓子の味ですが、
「日本人が違和感を感じることなく、自然と食べられる味」でした。
本場のお店で食べると、もっと味わいが違うのかもしれませんが。
日本人の違和感のなさは、地理的な側面もありそうです。
北西に位置する隣国クロアチアはイタリアの影響を受けた料理(トマトベース)が多く、
北の隣国ハンガリーは、セルビア同様パプリカの産地です。
8カ国と国境を接しているセルビアは、
地理的にさまざまな国の料理の影響を受け、
日本人にもなじみやすい味ではないかとのこと。

手前にセルビアのコーンブレッド、その奥にメレンゲと胡桃の焼き菓子

手前にサワーチェリーのケーキ

福田さん、貴重な音楽祭をありがとうございました!

セルビアのお衣装も素敵でした。

セルビア民俗衣装を着用した演奏者4名。向かって左から、早川枝里子さん(ピアノ)、角崎悦子さん(バイオリン)、福田里香さん(ピアノ)、塚村紫さん(ソプラノ)(c)So Okamoto

早川枝里子さん、福田里香さん (c)So Okamoto

#セルビア共和国大使館 #セルビア音楽祭  

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