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I'll Never Cry (from tomorrow)というアルバムについて #9 "adorable"

9曲目、アドラブル。

『adorable』


薄紫のサイダー泡立って

その一つひとつを眺めて

溜息を幽霊にした少年を思い出す


ポケットの中 すべてを抱きしめて

歪んだ夢でも海も空も春も


ぼんやりと円を描く惑星の日々よ

踏切でかき消された風船の割れる音


ポケットの中 すべてを抱きしめて

歪んだ夢でも海も星も雲も


la la la la la la la la la…


指先からこぼれる七つの光

どうせなら舞い上がれ脱ぎ去ったシャツよ

誰もいない輪の中で

センチュリープラントが揺れて気づかせるもの


ポケットの中 すべてを抱きしめて

歪んだ夢でも海も空も春も

ポケットの中 すべてを抱きしめて

笑ってたいなら涙も捨てないで

他の曲の歌詞にも出てくるがこの時の自分はやたらと「ポケット」にこだわっていた。今では鞄を持って出かけるようになったが、当時はすべてをポケットの中におさめようとしていた。財布や携帯はもちろん、文庫本や道すがら買ったペットボトル、果てはフルーツなどありとあらゆるものを詰め込んだ。

ポケットの中とカバンの中では感覚が大きく違う。ポケットの方が圧倒的に自分の内側に存在するように思える。人間は人生の殆どを衣服につつまれて過ごすからか、身体感覚の延長が起きているらしい。
この感覚が他者からしても同様なのかは分からないが、少なくともポケットじゃなく鞄に手をつっこみながら歩いている人物を僕は見かけたことがない。

僕たちが安心して生きていくために必要なのはポケットの広さなのではないか。万物にまみれた世界に裸一つで投げ出されるのはあまりに残酷だ。
じゃあ、世界を内側に取りこめばいい。
大丈夫、お前が世界だ。喜びも悲しみもすべてはその中で起きている現象にすぎない。だから飲み込め。決して飲み込まれちゃいけない。

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