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なかったことにする能力。

さっき少し言い合いになった人とでも、平静を装って話ができる。

昨日ケンカした相手にも、また今日は笑って挨拶をする。

こういう風に「なかったことにする」のは、ひとつの能力だと思う。できない人には、できない。この能力を身につけた人だけができることだ。

幼い頃は、友達とケンカしたら「もう絶交だから」と言って何日も話をしなかった。目も合わせず、互いに存在しないものとして過ごしていた。

それが、成長するにつれて、ちょっとした衝突くらいでは動じなくなった。意図的に鈍感になった、という感じか。

いちいち正面から向き合ってぶつかっていては、人間関係が破綻する。それを学習していくのだ。その結果、いろんなことを「なかったことにする」ようになる。

本当は心のどこかでまだ引っかかっているような出来事でも、忘れたくても忘れられない出来事でも、なかったことのように振る舞う。

それは人間関係をスムーズにするかもしれない。誰かを傷つけずに済むかもしれない。

しかし自分の心に蓋をするわけだから、必ずしも自分が心地よくいられるかというと、そういうわけではない。

わだかまりを抱えたまま笑うことが、だんだんつらくなるかもしれない。嘘をついているようで心苦しくなるかもしれない。

だから私は、できるだけ自分の心に正直でいたいと思っている。相手が近ければ近いほど、素直でいなければ関係が続かないからだ。

自分の心を押さえ込んでまで付き合う必要のある関係など、本当はそんなに多くない。無理してまで付き合う関係は、むしろ断ち切った方が健康的だとさえ思う。

* * *

恋人と別れた後、友達に戻れますか?

この質問に「はい」と答えられる人は、「なかったことにする能力」を持っている。

私にはできないな、と思う。

ユキガオ

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