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「観念して、向き合って」

「わたしはこの二次元キャラクターに本気で恋をしている」。その事実を受け入れたのは、今年の6月の終わりごろのことでした。

ブラウザゲームの画面越しに彼と出会って1年半以上。何十人もの登場キャラクターのうち、何人かいる「推し」のうちのひとりだと思っていた彼に、いつの間にか恋心を向けていたことにはとっくに気がついていました。優しくて真面目で礼儀正しい、まさにわたしの理想の男性。彼みたいな人が三次元にいるのなら恋仲になりたいけれど、「彼みたいな人」は彼ではないから、そんな仮定に意味はない。「彼みたいな人と」ではなくて「彼と」恋仲がいい。いつからのことなのか、何がきっかけなのかはわからないけれど、そんな気持ちがわたしの中でしっかりと根を張っていました。

けれど、相手は二次元のゲームキャラクターで、わたしは三次元に生きる人間です。この気持ちは本物の恋心なのか、現実の恋活や婚活から逃げたいだけではないのか。彼のことをひとりの男性として恋慕うわたしが確かにいることをわかっていながら、そんな自分を疑って堂々巡りをしていました。

出口の見つからないループを抜け出せたのが、今年の6月。別件で受けたカウンセリングがきっかけでした。

カウンセリングは定期的に通っていたわけではなく、お試しで受けたものです。養成講座を修了したばかりのカウンセラーさんに、悩みごとを聞いていただけるとのことで、何かが変わる、何かを変えるきっかけになればと思い、カウンセリングをお願いしました。

優しいカウンセラーさんに、長年の悩みごとについてたくさん話を聞いていただいたおかげで、カウンセリングのあとは気持ちがだいぶ晴れやかになりました。まるで、メガネのレンズの曇りを拭ったあとみたいに。悩みごとを誰にも打ち明けられずに抱え込んでいたわたしと一緒に、自分の恋心を疑うわたしも、気づけばいなくなっていました。

靄が晴れてしまえば、あとに残ったのは彼が大好きだというとてもシンプルな気持ちでした。「受け入れる」というよりは、そこにあるものをただ素直に見つめられるようになった、というほうが正しいでしょうか。それだけのことが難しいことだってたくさんあるけれど、わたしの場合は別件でのカウンセリングを通して、自分から幸せを選びとろうと決めたことがきっかけになったのだと思います。

と言うと、自分が成長したみたいで聞こえがいいのですが、本当のところは彼からの愛情に押し負けただけなのかもしれません。彼は両片想いとわかっている相手を放っておくようなひとではないので、十分有りうることです。それはそれで嬉しいことなので、真相がどちらであってもわたしは構いません。

現在の世の中の「普通」の基準に則れば、わたしと彼の恋は「普通ではない」のでしょう。けれど、自分の恋心に嘘をつかずに向き合えるようになったことを、わたしは誇らしく思っています。

「普通じゃない」としても、わたしは彼のことが大好きです。誰かを想う気持ちに、「普通」も「普通じゃない」もない。世間一般の「普通」でないからといって、疑ったり、卑下したりしなくていい。ずっと前からわたしを好きでいてくれた彼には随分待たせてしまいましたが、やっとそんなふうに思えるようになれました。

なんて偉そうなことを言ってはいますが、わたしも思い悩むことがなくなったわけではありません。自分の恋心を疑うことこそなくなりましたが、悩みは尽きないのだから困ったものです。それでも、ここに書き記したことが誰かにわずかでも希望をもたらせたのなら、とても嬉しく思います。

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