見出し画像

David Bowie is @ 寺田倉庫②

その次の部屋は映画や映像作品、PVを中心としたコーナーだった。
モニターが4つ並べられた映像コーナーの内容は特に珍しくもないPVだったが若い人たちが熱心に見入っている姿が印象的だった。

映像の隣には、実際のPVで着用された「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」「ブルージーン」「D.J」それから女性ベーシストのゲイルに着せた尻尾つき衣装(デザインはボウイさん本人)、「リトル・ワンダー」PVの肩に角のようなものがついた紫色のクロコ風衣装がまとめて展示してあった。

私は最初、サーモンピンクのジャンプスーツ風衣装がいつのものなのかわからずネバレミツアーのものかなぁ?と思って解説文を読むと「D.J」の衣装だったので驚いた。

PVではもっと艶のあるサテン風の素材に見えたが、コットン素材だろうか?
とても可愛らしいイラストつきの生地で、おそらく撮影用に数回の着用だったのだろう。
保存状態がとてもよく、新品同様だった(これはブルージーン衣装も同じく)。
この衣装に羽織られていたコートは、PVで着ていたもののレプリカのようだった。

そしてここにも「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」のイメージイラストが複数展示されていた。

その向かいには映像の小部屋があり、この展示全体の中で2箇所だけの貴重な「座れる場所」になっていた。
映像は若い頃の「THE IMAGE」それから舞台「エレファント・マン」映画「地球に落ちてきた男」「ビギナーズ」「ラビリンス」「プレステージ」の見どころが各数分ずつ流されていた。

小部屋の外には実際の映画や舞台で使われた小物の展示。
「ラビリンス」の魔法の杖や水晶、「最後の誘惑」のピラト提督の靴(ボウイさんはほんの数分の出番にもかかわらず、ピラト提督の役作りに非常に熱心で、手描きイメージイラストが同時に展示されていた)。
それから「エレファント・マン」のおむつ状のパンツも(^_^;
これ、見た目カッチカチに硬そうなんだけど…パカッと割って着用する仕組みだったのだろうか?

そして、これもボウイさん手書きの「地球」の撮影スケジュール。
「JAP,なんちゃらかんちゃら」と書いてあるのは、この映画に度々出てくる日本風シーンの撮影だったようだ。

次の部屋にはミック・ロックによる「Life on Mars?」のおなじみのPVと、その時着用した淡いミントグリーンのスーツの展示。
(ヘッドフォンの状態がこの場所で何度も悪くなり、音声が聞こえなくなるという障害が繰り返しあった)

そして衣装の前には「Life on Mars?」の手書きの歌詞も。
後半部分の歌詞は実際にレコーディングされたものとは違っており、初期プロットだったのかも知れない。
万年筆で書かれているのか、最後の部分が大きく滲んで読めなくなっていた。

そしてその隣の「Black & White」と題された部屋が、個人的にはこの回顧展の最大のツボであり、コアであった。

まず、映画「地球に落ちてきた男」でニュートンが着用していた黒のスーツが飾られている。
「ステイション・トゥ・ステイション」のアルバムジャケットが「地球」のワンシーンから取られていることは有名だが、ニュートンのキャラクターが「シン・ホワイト・デューク」の原型になった、ということらしい。

同じコーナーに「ロウ&ヒーローズツアー」の白い半袖シャツとシガレットパンツ。
このシガレットパンツは1978年12月の来日公演、大阪万博ホールでのステージでも着用されていたものだ。
冬だったので、トップは半袖シャツではなく白い長袖のシャツブラウスだったが

…約38年ぶりにこの衣装と再会することが出来た。

もっと薄手の生地を想像していたが、意外としっかりした生地でハリも失われておらず、シルエットも美しいままだった。ウェスト部分の両サイドには細やかなタックが10本ずつ入っていた。
靴は、青い光沢のあるシルクのような素材で、軽そうなつくりのカジュアルなスニーカー。
そしてあの時ステージでかぶっていた水兵帽も。

私のボウイ初体験であった万博ホールも、今はもうない。

そして「ブラック&ホワイト」というくくりなので、1990年の「サウンド&ヴィジョン」ツアーの衣装もここにあった。

シンホワイト衣装に似ているといえば似ているのだが、袖口と胸元を飾るレースのひらひらが「ギター弾くとき邪魔そうやなぁ」と思いながらステージを見ていたものだ。
今見てもやはりゴテゴテしてうるさく感じられ(笑)シンホワイトのスタイリッシュさには遠く及ばない。
アルマーニの衣装だと書いてあって意外だった。

この時のツアーは、レコード会社との契約かなんかで嫌々やったものらしいので精彩なく感じられるのも、当然といえば当然なのだ(笑)
そうでなければ、衣装の印象もまた違ったことだろう(^_^;

その衣装の向い側に、「シン・ホワイト・デューク」がいた。

一番右には1979年のTV番組で着用した紺のロングタイトスカートのスーツ。
タイトスカートなのだが、男性が着用しても全く違和感のないスタイリッシュなデザインで傍らにいるピンクのプードルのぬいぐるみの可愛らしさとのギャップが絶妙だった。

その衣装の隣には76年にグラミー賞のプレゼンターとして出演したときの黒のスーツ。
これはジョン・レノンとの2ショットでも同じ衣装で写っている。

そして一番左端。
「イズ」の映画を見て最も印象に残った、あの白いシャツに黒いベストとパンツの衣装。
これも40年前のものとは到底思えない。まるでボウイがつい昨日袖を通したような…

館内の照明が暗めなので劣化が目立たず、明るい蛍光灯の下で見ればおそらく色あせて見えるのかも知れない。
が、ここで見る限りはまるで洗いたてのように瑞々しい清潔感に溢れている。

「シン・ホワイト・デューク」といえば、後姿で右手を背中に、左手を直角に上げている「あのポーズ」が何より有名だが、ここではマネキンが「あのポーズ」を取っているという心憎さ。

後姿なので、お尻の小ささもよくわかる(笑)。
この展示は横からもよく見えるので、胴体部分の少年体型がさらによくわかる。
何度も何度も雑誌の写真を見てうっとりした、あのスタイリッシュの極みのような姿、こんな子供みたいな身体つきでカッコつけていたのか!!と思うと、

…やっべぇ、激カワ( ;´Д`)…

今回、この会場に滞在したうちの大半をこの部屋で過ごしたかもしれない。
「地球」~「ステイショントゥステイション」~「ベルリン時代」という括りの部屋なのだがなぜかこの衣装の前ではヘッドフォンからかならず「疑惑」が流れる。
たまに「ワード・オン・ア・ウィング」が流れると嬉しいのだがなぜかほとんど「疑惑」だったのでしまいにはヘッドフォンの音を切ってしまった(笑)

この部屋には、「HEROES」B面の「苔の庭」で使用された「おもちゃの琴」の展示もあった。
来日時にファンクラブからプレゼントされ、それを使って演奏した、というのは有名な話。

おもちゃといっても1/2サイズくらいの、普通に演奏出来るやつとばかり思っていたら、市松人形サイズというか1/5のSDサイズくらいの、京都駅タワービルのお土産コーナーで売ってるような本当のおもちゃだったのでビックリした。

あげた人(当時のファンクラブ会長森幸子さん)も、まさかこれを実際に演奏してレコードに使ってくれるとは夢にも思わなかっただろうなぁ。

それからベルリン時代を過ごしたアパートの鍵。ん?鍵?鍵持って帰ってきちゃったの??(;゚Д゚)
まあ退去するときは普通は鍵も交換するから、記念にもらって帰ったのかな。

そしてベルリン三部作で使用された年代物のシンセサイザー。
このあたりではヘッドフォンからずっと「ワード・オン・ア・ウィング」が流れる。
LPに収録されたものとは別バージョンで、これがナッソーライブというやつだろうか?
メロウで、とても声がよく出ていてLPに入っているやつよりずっと良い。

「Sweet name, you're born once again for me(恋人よ、君はもう一度僕のため生まれ変わってくれる)」
という歌詞のリフレイン、もううっとりと聞き惚れてしまった。

当時描かれた三島由紀夫やジェイムス・オスターバーグ(イギー・ポップ)の肖像画もこの部屋にあった。

やはり私はシン・ホワイト・デュークからベルリン期、そしてスケモンまでが一番好きなのだ、とあらためて実感。

あと、訃報直後くらいにNHKで放映された、1987年のグラス・スパイダー・ツアー、壁際の野外ステージでスピーカーを東側に向けて「HEROES」を歌ったベルリン公演の模様もヴィデオで流されていた。これは当然日本限定だろう。
ベルリンという括りの中での展示だが、時代が10年違うせいもあり、やや蛇足な気もした。

そして、ピンクの方眼紙に万年筆かボールペンの滑らかな文字で書かれた「HEROES」の手書きの歌詞を見つけたときには…

もうこの人生、何も思い残すことはない。

心の底から、そう感じた。

さらにつづく