戸籍に記載がない御先祖様
昨日、オフクロにこのミッションの終了を報告した。
ここ2年の前振りがあるからか、すんなりこのことを受け入れてもらえた。
作成した家系図もカンペキではないかもしれないから、今一度二人で精査をしようと、オフクロの父方の戸籍謄本を取り寄せることになった。この戸籍を取り寄せられるのは、彼女しかいない。
それを見ていた僕は、一つの発見をする
「ん?バアちゃんが、”次女”になってるよ?」
「えっ?」
と、オフクロ。
そりゃそうだ。僕だってバアちゃんは、”長女”と思っていて、疑う余地はみじんもない。
オフクロは必死に考えている。そして、
「・・・そういえば、見たことある。百日参りくらいの小さい女の子の古い写真を。名前は確か・・・〇〇さん。」
「誰よ、それ?」
「バアちゃんが最初に産んだ子だと思ってたんやけど・・」
「だって、オフクロは”長女”になってるやん。」
「そう。ってことは、この〇〇さんは、バアちゃんの”姉”さんなんかもしれん。」
「そういうことなら、辻褄は合うな。」
「確か・・・小さいうちに亡くなったと聞いたような・・・」
記憶は薄れてかけているようだ。
「けど、いずれにしても、オフクロが知らなかったら、誰も知らない、ってことになるよ。思い出せてよかんたんじゃない?」
「そうやね。」
そう、この〇〇さんは、
忘れられた存在
だったのだ。
よかった・・と思う。
定かではないが、おそらくこの〇〇さんは、生まれてほどなく亡くなったのだろう。だから戸籍に記載されることがなかった。少なくともそれから数十年、誰にも思い出してもらえずに時を過ごしてきたのだ。
これは寂しいことだ。
死者にとっては、思い出してもらうことが一番の供養なのだと聞いたことがある。なので僕らは、オフクロの診察が終わった後、二人でその足でお墓に行き、〇〇さんに祈りを捧げた。
「長い間思い出してあげられなくてごめんなさい。これからはもう大丈夫ですからね。安心して成仏なさってください。」
人には、生まれ持ったミッションがある。生きているということは、まだそのミッションが終わっていない、ということだ。
「なあ、オフクロ。オフクロのお役目は、こういうことを僕に伝えることなんじゃないの?わかるのはもう、あなたしかいないんだから・・」
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