ハラスメント研修講師(女性)による二次加害について

以下、2月に投稿した文章なのですが、最近話題の「オトコの体臭ガー」で問題になった女性の方もハラスメント研修の講師のお仕事をされていたとのことで、実際、ハラスメント研修の講師自体が特定のジェンダーや職業の人を差別する視座を持っていることは多いのではないか、という問題意識として再投稿します。

(以下2月に投稿した文章の再掲です)
一昨年末に、准教授として勤務する大学の男子学生からハラスメント被害を受けた後、学内外で次被害を受けても必死で働いてきました。
そんな私に最後にとどめを刺したのが昨年11月のハラスメント防止研修でした。

おそらく今、ほとんどの大学でハラスメント防止研修は行われており、私の勤務先でも毎年の受講が義務化されています。
大学によって内容や講師は様々なのでしょうが、私の勤務する大学では外部講師を招いて、ハラスメントの背景やハラスメントに当たる行為に関する話を聞くことが多いです。
一昨年の講師は民間のハラスメント相談センターみたいなところの中年女性で、とにかく「先生は悪者」という思想が強く、「先生は学生様の言うとおりにしない限りすべてハラスメントです」と言わんばかりの思想をすごい圧で押し付けてきました。

その数日後から、加害男子学生による「刑法(私の担当科目)の質問」にかこつけた付きまとい行為が始まりました。
いま思えば、初期段階で強く拒絶すればよかったものの、直前にあった研修が思い浮かび、「学生様の言うことを聞かないことはすべてハラスメントだから、耐えなければ」と我慢してしまいました。
結果的に、図に乗った彼により私は大きな被害を受けました。

という出来事があったので、被害後、私は弁護士を入れて副学長と話し合い、次年度以降のハラスメント研修では、教員が学生から加害行為を受けた際の対応や、被害に遭わないための対策についても盛り込んでほしいとお願いし、副学長側も書面でそれに同意しました。
結果的に、昨年のハラスメント研修のチラシには「今年度は学生から被害に遭った際の対応についても盛り込みます」といった文言が書かれ、講師も民間のセンターの無資格者ではなく、心理や福祉の複数の国家資格を持ち、他大学のハラスメントセンターの相談員の女性が務めるとありました。
こちらの要望を大学側も聞き入れてくれたのだと安心しました。

しかし、当日。
配布されたスライドをざっくり眺めると、学生から教職員へのハラスメントに関する記載はほとんど見当たりません。
それでもスライドは抜粋で、研修では言及されるのだろう…と信じて話を聞いていました。
話はいつもの通り、ハラスメントは教員が優位な立場を用いて学生にあんなことやこんなことをすることです~といった内容が続きました。
どれも、「刑法(私の担当科目)の質問」をしたい学生という、教員の私側が拒否しづらい関係性をフル利用した男子学生が私にやったことでした。
教員は学生への加害者にしかならないの?
生徒様の立場を利用した男子学生から女性教員へのストーカーや性暴力、暴言や脅迫はOKなの?

そんな悔しさで研修の途中から吐き気や過呼吸が止まらなくなりました。
それでも「学生から教職員へのハラスメント対策」についての言及があるとチラシに書いてあった以上、その点を聴かなければ…と必死で耐えて聴き続けました。

途中で一瞬だけ「近年、学生からのハラスメント被害を訴える先生がいます」という話題がありました。
しかしその内容は「正当な範囲の指導を『ハラスメントだ』として学生から訴えられるハラスメント・ハラスメント(ハラ・ハラ)」に関するもので、しかも「ハラ・ハラが怖いからと必要な指導さえ放棄することはアカハラです」と教員側を威嚇するものでした。

なにこのセカンドレイプ感。
私がされたのは「ハラ・ハラ」なんかじゃない。
学生が教員からやられたら教員の首が飛ぶレベルの付きまといや性暴力、暴言・暴行、業務妨害…
「ハラ・ハラ」について注意喚起してほしいわけじゃない。

苦しくて苦しくて、嘔吐しそうになりながら、最後まで聞き続けましたが、結局「ハラ・ハラ」以外で学生から教職員に対しておこなわれるハラスメントについての言及はないまま、研修は終わりました。
そのうえ、通常は用意されている質疑の時間も、講師が長々ーく話したために取られることなく、人事課がZoomを閉じました。

その日をきっかけに私の心身は壊れてしまいました。

先日、その時のことについて副学長と話す機会がありました。
副学長曰く、「自分たちは事前にスライドを確認し、講師に学生から教員へのハラスメントについてもう少し扱ってほしいと指摘したが、直前だったためスライドは改訂してもらえず、研修が時間を超過したために質疑も時間も取れなかった」。

ハラスメント研修以降、体調を崩していることはすでに副学長にも何度も伝えていたし、おそらくではあるけれど、産業医からも伝わっていた可能性があります。
それでもなにも言った来なかった人間が今さら言うことなので、3か月間必死で考えた言い訳の可能性は無きにしも非ず、ではあります。

しかし、もし講師が本当に副学長の言う通りの態度だったとしたら、そんな人がハラスメント研修の講師をできてしまうことにも問題があると思います。
今、カスハラやモンスター患者といった問題が増えている中、学生(生徒様)の中にも「学費を払ってやってんだから、教員も事務も言うこと聞きやがれ」という尊大さを持ってしまう者がいても不思議ではありません。
その中で、特に女性教員や非正規教員など、強者男子学生より何かしらの面で弱い立場にいる教員は、特に被害に遭うリスクがあります。

そうした構図を一切無視して、「教員=権力=ユルセナイ!」という思想に満ち満ちた講師が「御生徒様は神様です!」と吹き込むことで、学生から被害に遭った教員は「御生徒神を冒涜したことで天誅を受けた者」と見られ、声をあげづらくなります。
私自身、Metoo系やフェミの方からも「学生さんに被害に遭うなんて、よほど恨みを買ったんですね」などと公正世界仮説を当てられたことがあります。

そういう公正世界仮説を実はハラスメント研修の講師が作り出してしまっている現実。
本当に悔しいし、何とかしたいって思います。

(注)私はここに書いた件以外でも、学生(女子含む)対応で複数のトラウマを抱えている身であり、学生・生徒の立場の方からの相談や質問には一切対応しかねます。
ご了承いただければ幸いです。


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